沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
ゴールドシップはなぜ走ったのか?
パドックで見せた、ある変化とは。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2015/05/07 12:00
6歳にして3度目の正直で春の天皇賞を制したゴールドシップ。次は宝塚記念3連覇の偉業がかかる。
レース後も尻っ跳ねを繰り返すほどの余力。
直線、横山は大きなアクションで追いつづけた。勝ち切るだけの手応えではないように見えたが、ゴールドシップはジリジリと伸び、ゴールまで7、8完歩のところで内のカレンミロティック(3着)をかわし、外から伸びてきたフェイムゲーム(2着)の追撃を抑え、見事、GI6勝目をマークした。
それでも力があり余っていたのか、レース後のクールダウンのときも尻っ跳ねを繰り返し、ファンを喜ばせていた。
ゴールドシップは、前走、阪神大賞典を3連覇したあと、右前脚の蹄球炎を発症した。そのため、この天皇賞を回避する可能性もあったのだが、陣営が最終的に出走に踏み切った理由に、「ファンの声援に応えたい」という思いは当然あったはずだ。
横山典弘の「秘策」とは何だったのか。
須貝調教師は、勝利調教師インタビューをこう切り出した。
「これもゴールドシップを応援してくれたファンのみなさんのおかげです」
横山は、「『秘策がある』と言って、乗せてもらった。実は、乗せてもらえるよう口説くことこそが秘策だった」と笑った。
彼らは、「出走できたことが勝因」と言っていたようなものだ。「走り切りさえすれば勝てる」というぐらいの自信があったのではないか。
負けがつづいていた京都コースで菊花賞以来の勝利を挙げ、苦手だったわけではないことを証明した。ということは、史上初の宝塚記念連覇をやってのけた阪神コースが、必ずしも得意とは言えないのかもしれない。走る気になったときにレースがあった(あるいは陣営がそういう気分にすることができた)だけ、と見るべきなのだろうか。
買うべきか、見送るべきか、これからも迷わされそうだ。