沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
ゴールドシップはなぜ走ったのか?
パドックで見せた、ある変化とは。
posted2015/05/07 12:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
スタート前からゴール後まで、芦毛の古豪が主役を張りつづけた――。
第151回天皇賞・春(5月3日、4歳以上GI、京都芝外回り3200m)を制し、古馬王者に君臨したのは、単勝2番人気のゴールドシップ(牡6歳、父ステイゴールド、栗東・須貝尚介厩舎)だった。1番人気に支持されたキズナ(牡5歳、父ディープインパクト、栗東・佐々木晶三厩舎)は7着に終わった。
ものすごく強いが、気難しい。力を出せるかどうかはその日の気分次第。勝つときは凄まじいパフォーマンスを見せ、負けるときは別の馬かと思うほどあっさりやられる。それがゴールドシップらしさで、だからこそ人気がある。
ゴールドシップの好調を物語った、パドックでのある変化。
天皇賞当日は気分がよかったのか、あるいは逆に、嫌なことがあってカッカしていたのか。どちらかはわからないが、パドックでは、キッと前を見つめ、後ろ脚をグイッと深く踏み込み、静かに闘志を燃やしていた。
私は、このレースを含むゴールドシップの25戦のうち、ほぼ半数の13戦を現地で見ている。間違いないのは、その13戦のうち、今回がもっともレースに集中する姿勢を見せていた、ということだ。
ゴールドシップは、パドックで、私が「P音(ピーオン)」と呼んでいる、お椀をふせるときのような「パコッ、パコッ」という音を蹄から立てて歩くことがよくある。P音を出す馬は、総じてレースではあまり走らない(もちろん例外はある)。おそらく、上から力なくポンと脚を置くからP音が出るのだろうが、この日のゴールドシップは、後ろ脚を地面スレスレに長く滑らせるようにしてからギュッと大地をつかむように下ろしており、P音を出していなかった。
歩き方だけではなく、揺らぎのない目線や、ピンと立てた耳、ハミを確かめるようにしている口元からも、「やってやる」と全身に覇気を漲らせているさまが伝わってきた。