球道雑記BACK NUMBER
ドラ2・田中に隠れたロッテのドラ1。
中村奨吾、快挙の裏にひそむ「黙々」。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/05/01 16:30
天理高校時代に甲子園に3度出場し、早稲田大学時代には日米野球オールジャパンにも選ばれていた中村。
今江、鈴木らチームの顔が、中村の前に立ちはだかる!
「開幕一軍入り」
「プロ初スタメンで初安打」
中村のそうしたひとつひとつの記録はさして話題になることもなく、さも当たり前のように過ぎていったが、それが功を奏したのかもしれない。中村は、チーム内のあることに気付いていた。
「ベテランの選手でも、ただ野球に、練習に毎日没頭していて、本当に野球が好きなんだなって感じました。まるで子供が野球をするようにがむしゃらで……。華やかな世界の裏には見えない努力があるというか、裏ではどの選手も深く考えていたり、凄い量の練習をしていたり、それはもちろんプロに入る前から分かってはいましたけど、改めて今、そうだなって思えるんです」
中村の前に立ちはだかる壁の中には、練習では一切の妥協を許さないことで知られる今江敏晃がいた。鈴木大地がいた。早稲田大学時代は、大学日本代表の四番に座り、才能では彼らにひけをとらない中村ではあるが、今ではすっかりチームの顔として君臨する今江、鈴木らに代わってスタメンに名を連ねるのは、けっして容易なことではない。そしてそんな彼らとて、日々の結果に納得ができない日は、試合後の静まり返った球場に居残り、人知れず努力を続けている。
彼らを超えていくためにも一日一日の結果に一喜一憂しているわけにはいかないのだ。
小、中、高と対戦してきたライバル、山田哲人。
そんな中村がずっと追いかけてきたライバルがいる。
ヤクルトの山田哲人だ。
「(山田は)小・中・高とずっと対戦している選手で、中学も同じリーグでしたし、高校最後の夏も彼がいた履正社高に負けて自分たちは終わったので、自分の中にはずっと彼がいましたね。その後、彼はプロに行って、自分は大学に行って道は分かれたんですけども、この4年間、自分は親にお金を払ってもらって大学で野球を続け、彼は4年間自分でお金を稼ぎながら野球をしてきた、その差はきっとあると思うんです。
だからと言って、自分が大学でやってきたことは無駄じゃないと信じていますし、意識しないと言ったら嘘になりますけど、彼は昨年、セ・リーグの最多安打も打って、侍ジャパンにも入って本塁打を打ったりと、すでに実績も積んでいるので、素直に凄いなと感じますし、尊敬もしています。だけど自分も今年プロに入ってまた同じ土俵に立ったので、これから技術も精神力も磨いて、必ず彼に追いついていきたいなって思っています」