球道雑記BACK NUMBER
ドラ2・田中に隠れたロッテのドラ1。
中村奨吾、快挙の裏にひそむ「黙々」。
posted2015/05/01 16:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
色めき立つ周囲の反応をよそに、彼は実にさばさばとその瞬間を振り返った。
「たまたまです」
自身のプロ入り初本塁打は、チーム初、そして球界9人目となる「新人選手の初回先頭打者本塁打」の快挙となったが、そうした名刺代わりの一発にも、中村奨吾は、気持ちの高揚を抑え、むしろ淡々とその感想を述べていた。
「取材する方も仕事で来ているので……」
元々、自身の結果、成績についてはあまり語りたがらない性格である。
「評価は周りの方がしてくれることなんで、自分で良いのか、悪いのかというのは考えないようにしています。なので調子はどうですか? と質問されても自分はいつも『普通です』、『たまたまです』と返すようにしています」
そういう意味ではある種、記者泣かせとも言える。それは当人も重々承知の上で、こう続けた。
「そう言っていつも取材をしてくれる方を困らせてしまうのですが、でも取材する方も仕事で来ているので、それに応えなきゃいけないというのも理解しています。ただ、野球なんで調子が良いときも悪いときも、結果が出るときも、出ないときもあるので、一概に、今日は良いとか、悪いは言えないなというのはありますし、答えたくないのもあります。
そこは一打席、一打席で変わってきますし、いい結果が出たらいいと言えますが、次の打席でダメでも普通ですと答えるようにもしているんです」
京大卒・田中英祐の高い話題性の陰で、黙々と。
思えば昨年10月のドラフト会議から、中村は話題性という点で、ずっと同期入団の田中英祐の陰に隠れていた。
「京都大学初のプロ野球選手」
「球団史上2番目の大入り満員のなかでプロデビュー」
本人の思いとはよそに、次から次へと話題が尽きない同僚を傍目に、中村は自分のやるべきことをただ黙々とこなしていた。