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ジュビロ名波監督の理想形、見えた!
J2序盤の大一番制した戦術の核心。  

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/04/27 11:25

ジュビロ名波監督の理想形、見えた!J2序盤の大一番制した戦術の核心。 <Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

J2降格1年目の昨年、プレーオフで敗れてJ1昇格を逃したジュビロ磐田。今年は自動昇格の2位以内を絶対の目標に掲げ、9節終了時点では堂々の首位に立っている。

時間稼ぎではなく、ゴールに向かう決断。

 ボールを奪われた瞬間にズルズルと後退せず、“前”に出て相手のロングボールを跳ね返したこと。前に出た櫻内の動きを見て、センターバックの伊野波がきっちりとカバーリングに走っていること。そして、クリアボールを拾った中村が3対3の状況を見て、時間稼ぎのコーナーキープではなくゴールに向かったこと。その判断を受けて、松井が思い切り良く左足を振り抜いたこと。ピッチに立つ選手たちによるいくつもの「ジャッジ」が連動した結果、相手の息の根を止める2点目は生まれた。

 指揮官・名波の言葉に戻る。

「ロースコアのゲームになると予想していました。中盤の潰し合い、最後のところで身体を張る気持ちという意味では、千葉とは拮抗したレベルにあると思うし、第8節までの内容では、我々よりも千葉のほうが上だなと僕自身は感じていた。まだまだ甘いところはありますが、クロスに対して、ドリブルに対して、シュートに対して、ボールに対する考え方として“決断する”ことが非常に強く出たと思う。今日は、守る時間帯というものを、きっちりとピッチの中でジャッジすることができたと思います」

ポゼッションは基本であって、絶対ではない。

 名波監督は、就任当初から「ボールを保持するサッカー」、あるいは「主体的に攻撃するサッカー」を標榜すると口にしてきた。ただし、それは文字どおりの意味、つまりどんな相手に対しても、どんな状況においても無闇に順守されるべき規則ではなく、藤田の言葉を借りればあくまでチームとしての“スタートポジション”に過ぎない。大切なのは、ピッチの中で、選手たちが「主体的」に「ジャッジ」し、その状況に応じた戦い方やプレーを決断することだ。

「ピッチの中で、選手たちが判断する」ことの重要性は、カテゴリーを問わず多くの指揮官が口にする大きなテーマである。その力が備わってきた磐田がJ2の首位を快走していることに不思議はない。逆に、森本貴幸と佐藤勇人という2人の柱を欠きながら、その状況に応じた戦い方を「ジャッジ」できなかった千葉が敗れたことにも不思議はない。

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