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等々力最多の観客が求めたものは?
川崎と浦和の“殴り合わない”選択。
posted2015/04/13 11:35
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
膠着した展開? いつもと違うな……。
ハーフタイム時の正直な胸の内を書くと、こうだ。
12日に行なわれたJリーグファーストステージ第5節、川崎フロンターレvs.浦和レッズ。平易に、極端に表現するなら、前者は“相手を攻め立てて”、後者は“相手をおびき寄せて”仕留めるパスサッカー。チームを率いる風間八宏監督、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のスタイルが反映され、ピッチを見つめていると、その色の濃さを強く感じる。
この2人の指揮官が率いて以降、川崎と浦和の対戦はスコアに関係なく、とにかく自分たちの形を真っ向からぶつけ合う“激戦”が多かった。
印象的なのは'13年のナビスコカップ準決勝第1戦だ。浦和がアウェーながら興梠慎三が2得点を奪ったかと思えば、川崎はレナトの追撃弾、そして大久保嘉人がワンステップで蹴りこんだ弾丸ミドルなどで3-2と試合をひっくり返した。一方で'14年のリーグ戦第8節はスコアこそ1-0だったものの、ボールを保持した側が“持たされる”ことなく、互いにチャンスを作り合った。この対戦、たいていは「一見さんでも楽しめるオープンな展開」になるのだ。
その期待を抱いたファン、サポーターも多かったはず。新装された等々力陸上競技場は当日券が出ないほどの盛況で、同競技場史上最多となる24,992人の観衆が駆け付けたのだから。
浦和が前からのプレッシャーではなくリトリートを選択。
しかしこの日の試合は、まるでチャンピオンズリーグのファーストレグのような“戦略的な展開”となった。
その戦略を仕掛けた側は、浦和だった。
「我々は過去の川崎戦で、ボールを持って主導権を握りながら、攻撃を仕掛けて前掛かりになったところでカウンターを受けて失点を重ねました。そういった教訓から、前からプレッシャーに行くのではなく、ハーフラインあたりまで前の選手をリトリートさせて、相手の攻撃を待つ形で、奪ってカウンターという狙いで入りました」
監督会見で、ペトロヴィッチ監督はこう話した。
序盤は敢えて引く戦いを選択したのだ。