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等々力最多の観客が求めたものは?
川崎と浦和の“殴り合わない”選択。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/04/13 11:35
J1でも確固たるスタイルを持つクラブである2クラブの対決は、常に激しい戦いになる。今季も上位を争う2クラブだけに、2ndステージの埼玉スタジアムでの対決も楽しみだ。
川崎もまた、繋ぐサッカー一辺倒ではない。
ほとんどの試合でボール保持の時間で相手を上回る浦和が、川崎という相手を相当警戒した、と感じる言葉だった。
これは前節、川崎がアルビレックス新潟に4-1で大勝したことが伏線になったのかもしれない。
新潟は川崎に対して、キックオフ直後からほぼマンツーマンで、前線からのプレスを仕掛けた。だが川崎は序盤こそ手こずったものの、杉本健勇のゴールで先制すると、結果的にシュート5本で4ゴール。効率的に勝ち点3を奪い取った。
ビルドアップが苦しいなら、いっそ力のある前線にボールを預けてしまえ――。別の引き出しを見せた川崎の戦いぶりを伝え聞いて、自らの形を崩さないペトロヴィッチ監督がいつもと違うゲームプランを考えたのかもしれない。それはそれで興味深い。
ただ、相手の裏をかいたはずの浦和だが、前半35分に川崎の車屋紳太郎の突破から森谷賢太郎に先制点を許し、リードを奪われてしまう。逆に後半は前で圧力をかけていくことでチャンスが増え、89分にFKに合わせたズラタンの移籍後初ゴールで同点に追いついたのだから、サッカーは分からない。
憲剛「ちょっともったいなかったですね」
実際、ピッチに立っていた浦和の槙野智章はこう感じていた。
「正直、僕らがもう少しイニシアチブを握れるんじゃないかなと思ってました。ただ、相手にボールを持たせた時の方がショートカウンターがハマるな、という印象を持っていました」
今までの対戦とは違うという感覚は、川崎側にもあったかもしれない。
「システムがマッチアップするところがあったんで、ミスや1対1(の局面)で大きく戦局が変わる試合だったと思います」
この日、川崎のアンカー的なポジションを務めていた中村憲剛のコメントである。
浦和と対戦する時、川崎は普段から使っている4バックだけでなく、3バックでシステムを噛み合わせる“ミラーゲーム”を選択することがあり、今回の戦いでは後者だった。
中村は続けた。
「浦和独特のフリックパス(※正面から来たクサビのパスを斜め後ろに流すプレー)は、1トップのズラタン選手の前に自分が入ることで消していこうという話はしていました。守備に関してはすごく狙い通りいったと思います。今日はチームとしてのマネジメントはほぼうまくいっていて、先制点を取って以降は守備を基盤にカウンターを狙って“2-0以上にしよう”とは言っていました。そのチャンスがなかったわけではないので、(引き分けという結果は)ちょっともったいなかったですね」