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「最年少」「海外組」という二面性。
U-22における南野拓実を考える。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2015/03/31 11:35
19歳にして海を渡り、オーストリアに移籍した南野拓実。「セレッソユースの最高傑作」と言われた男の真価はしかし、まだ存分に発揮されているとはいいがたい。
一番年下の南野が、妙に落ち着いている理由。
「海外での生活もだいぶ慣れてきました。チームメイトとも仲良くなりましたし、練習が終わった後スタジアムのカフェにご飯食べに行ったりしています。ザルツブルクは日本食レストランがないのがキツイですけど、イタリアンで済ましたり、あとは米を送ってもらって自炊をしています。海外にいると、環境は日本が一番いいなって思いますね。コンビニとかあるし、いろんなものが揃っている。ただ逆に日本が良すぎてしまうというのもあるんで、今の自分には厳しい環境でやるのがいいかなって思っています」
精神面や人間性が鍛えられると、それが行動に出てくる。U-22で一番年下の南野が妙に落ち着いて見えるのは、短いながらも海外での経験を着実に自分の血肉にしているからだろう。そして、その成長した姿をマカオ戦のゴールで見せてくれた。
つづくベトナム戦もマカオ戦同様、結果を出してチームの勝利に貢献してくれるだろう。監督もそれを期待し、南野と久保裕也を攻撃の主力である中島翔哉と初めて組ませてスタメンでピッチに送り出した。
鈴木武蔵が活躍し、監督も南野に対して厳しい評価。
しかし、南野は自分らしさを出せずに苦しんだ。試合前のスコールでピッチ状態が最悪。しかし、オーストリアでも雨が降ると芝が緩み、田んぼのようになることがある。むしろ、そうした重馬場の中で違いを見せてこそ海外組の真骨頂だと思っていた。
だが、初戦と同じようにイージーミスが多く、初めて一緒にプレーする選手が多いせいか、周囲との連係もうまく噛み合わない。シュートを打っても枠に飛ばず、DFに当たることが多かった。そして後半36分、南野は浅野と交代してピッチを去った。うつむき加減に監督と握手したが、その表情は悔しさで一杯だった。
「前半チャンスがあったけどシュートが枠に行かず、決められなかった。コンビネーションの部分でもやりにくい部分があった。これからもっと合わせていかないといけないですね。チームが勝ったのは良かったですけど、個人的には結果を出せなかったのが悔しいです」
ベトナム戦、南野は「結果」を出すことができなかった。逆に、途中出場した国内組の鈴木武蔵が活躍するという皮肉な結果になった。監督にも「海外組は違いを見せることができなかった」と、厳しい評価を下された。