サムライブルーの原材料BACK NUMBER
ロンドン世代の反攻が始まった日。
清武弘嗣が吐露した世代交代の意志。
posted2015/03/31 10:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
2014年6月25日は、「彼ら」にとって特別な一日だったに違いない。
コロンビアに大敗を喫してブラジルW杯の戦いが終わった翌日、合宿地イトゥのグラウンドではボールを蹴る音が聞こえていた。
もう備えるべき試合などないというのに、清武弘嗣や山口蛍ら、ロンドン五輪世代の若きメンバーが自主的に集まっていた。
「もう4年後のスタートは切っている」と、あのとき清武は言った。その日を、ロシアW杯に向けた“始動日”としたのだった。
あれから9カ月が経った。
アルベルト・ザッケローニが退任し、ハビエル・アギーレも短期間で日本を去った。そしてヴァイッド・ハリルホジッチが新監督に就任した。
チュニジア戦に6人並んだ五輪メンバー。
偶然か、それとも意図的か。
新監督はチュニジア戦の先発メンバーに、ロンドン五輪に出たメンバーを多くピッチに送り込んだ。W杯以来の代表復帰となる山口、権田修一、酒井宏樹、右サイドには5年ぶりにA代表に呼ばれた快足の永井謙佑が入った。そしてトップ下に位置したのが清武だった。オーバーエージ枠の吉田麻也を含めれば、あのスペインを撃破し、4位までこぎつけたメンバーが6人も顔をそろえた。日本代表の新しい出発を印象づけた。
しかし、トップ下の清武を中心にしたチームは1点も奪えなかった。
後半15分、清武は永井とともに最初に交代を告げられた。地元・大分のスタジアムは拍手に包まれたが、代わって本田圭佑、香川真司がピッチに入っていくと、期待感を映すようにそれ以上の拍手が巻き起こった。12分後に岡崎慎司も加わり、「常連組」の活躍によって2点を奪ってチームは勝利を手にした。
本田も香川も岡崎も、役者が違う。そのとおりだと思う。
それでも筆者は、常連組の活躍をお膳立てした「彼ら」の奮闘のほうに、むしろ目がいった。決してスムーズな連係ではなく、停滞した時間はあったものの、「彼ら」の働きが決して簡単な相手ではなかったチュニジアの動きを鈍らせていった。足が止まったというより、足を止めたという印象を持った。長距離のフライトが、その主因ではなかったはずだ。