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「今年の夏には勝てるようになる」
王者メルセデスが恐れるホンダの力。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2015/03/22 10:35
開幕戦でまともに走れる状態ではなかったマクラーレン・ホンダを、ジェンソン・バトンが11位完走に持ち込んだ。元王者の面目躍如だ。
ドライバーの癖やコースの特徴に応じた調整が必須。
昨年フェラーリが苦労したのは、この部分だった。
特にブレーキングがアロンソと違うライコネンは、5年ぶりのフェラーリ復帰ということでBBWをなかなか自分のフィーリングに合わせてもらえず、本来のパフォーマンスを発揮することができなかった。
昨年の最終戦後にアブダビで行なわれた合同テストでフェラーリが試したプログラムは、そのすべてがライコネン好みのプレーキングにBBWを合わせるというメニューだった。
そして、オーストラリアGPが行なわれたアルバートパーク・サーキットでホンダが苦労したのもまたその部分だった。
ホンダがウインターテストを行なったスペインのへレスとバルセロナは、完全に閉鎖された競技用のコースだが、アルバートパークは公園の中に作られた人工のコース。レース以外の日は一般の自動車が走行しているため、アスファルトの表面が削り取られ、路面のミュー(摩擦係数)が低い。
しかも、レイアウトもストップ&ゴー・タイプで、ブレーキングがへレスやバルセロナとまったく違っていた。こうしたコースでのテストをまだ行なっていなかったホンダが、対応に苦しめられたのも当然のことだった。
ルノーの苦戦が、新システムへの適応の難しさを証明。
ブレーキを踏む回数が多ければ、MGU-Kの仕事量は増える。さらにオーストラリアGPの週末の天候がホンダの予想を上回る高温となったことも手伝って、ホンダはMGU-Kの使用を制限した。
それによりエネルギー回生効率が落ち、フルパワーを使えないというハンディを背負ったことが、予選とレースでのペースダウンにつながったのである。
ホンダにはそれ以外にも課題が山積しており、コースがアルバートパークから次戦マレーシアGPのセパンになったからといって、すぐに解決するわけではない。
それは新パワーユニットになって2年目を迎えるルノーの戦闘力が、いまだに上がらないことが如実に証明している。