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「今年の夏には勝てるようになる」
王者メルセデスが恐れるホンダの力。
posted2015/03/22 10:35
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Hiroshi Kaneko
「この結果に日本のF1ファンは落胆していることだろうが、私から言わせれば、メルボルンでのホンダの状況は当たり前の結果だよ」
そう語るのは、新パワーユニット元年となった昨季のF1の覇者であり、今季開幕戦でも1-2フィニッシュを飾ってライバルたちを凌駕し続けている、メルセデスAMGのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)だ。
だが、ウォルフが言う「当たり前の結果」というのは、ホンダがコンペティティブではないということを意味しているのではない。
「私たちだって、昨年の開幕戦はとても苦労したということを忘れないでほしい。1回目のフリー走行からトラブルに見舞われただけでなく、レースではルイス(・ハミルトン)のマシンがパワーユニットの不具合からリタイアに追い込まれた。
昨年導入されたパワーユニットは、それは非常に複雑で、継続して参戦している私たちだって、いまだに苦労しているんだ。だから、7年ぶりに復帰するホンダが苦労するのは当然のこと。でも私たちがそうしてきたように、ホンダも必ずそれらの問題を克服して、そのうちわれわれとバトルを繰り広げるようになるだろう」
非常に重要かつ繊細なBBWというシステム。
現在のパワーユニットの複雑さを物語る代表例に、パワーユニットと同様、昨年から導入された“ブレーキ・バイ・ワイヤ”(BBW)というシステムの存在がある。
現在のマシンにエネルギー回生装置として導入されているERSは、リヤブレーキの制動によって発電する運動エネルギー回生システム(MGU-K)と、エンジンの排気熱を再利用する熱エネルギー回生システム(MGU-H)からなる。
BBWは、MGU-Kによる制動と従来からある油圧ブレーキの制動の仕事量の割合をコンピュータで協調制御するシステムにつながっている。
その制御は非常に重要でかつ繊細だ。
MGU-Kの導入により、ドライバーはブレーキが油圧だけだった時代より制動のコントロールが難しくなった。さらにブレーキングはドライバーによって異なるだけでなく、コースのレイアウト、そして路面状況によっても変化する。