セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
敵地無敗の“旅行代理店モンテッラ”。
同世代から抜け出した名将とフィオ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/03/18 10:40
現役時代は卓越した技術と裏への飛び出しでゴールを量産したモンテッラ。イタリア代表ではインザーギやビエリなどとの競争で出場機会は多くなかったが、指導者としては一歩先んじた印象だ。
エース負傷、守護神の契約延長で出足は鈍かったが。
今シーズン開幕当初、エースFWロッシの再負傷とチーム全体のモチベーション低下によって、フィオレンティーナの出足は鈍かった。
FWババカルやFWマリオ・ゴメスなどタイプの異なるストライカーたちを使い分けながら、アウェーゲームでも白星を追求することで建て直しを図ったモンテッラだったが、年を越すとすぐに“ネト問題”が起こった。
正守護神だったGKネトが契約延長を拒否し、今季終了後、宿敵ユーベへのトランスファーフリー移籍が確実に。“禁断の移籍”に激怒したクラブ上層部は、指揮官モンテッラへ懲罰的なネトの起用停止を命じた。渋々受け入れたモンテッラだったが「(契約延長交渉決裂を伝えた1月初頭の)クラブの声明発表は性急だった」と注文をつけ、ロッカールームの選手感情を守ろうとした。
トッテナムとの2戦目を前に、代役として奮闘していた第2GKタタルサヌが故障すると、復帰したネトは沈黙を守りながら好セーブを連発し、指揮官の気遣いに応えた。
独自の練習法、柔軟な試合中の戦術変化。
久しく3-5-2をベースとしてきたフィオレンティーナだが、トッテナム戦とユーベ戦に限らず、最近は4-3-3を多用するようになっている。イタリア随一の若手指揮官との呼び声高いモンテッラの指導によって、試合中の戦術変化も柔軟だ。
GPSを仕込んだビブス着用の練習で、選手の動きを視覚的に解析する試みをイタリアに初めてもたらしたのは、ローマ監督時代のモンテッラだった。
グアルディオラ時代のバルセロナが完成させた“ティキタカ”のボール捌きを取り込もうと試みた者は、イタリアにも大勢いた。しかし、最終ラインから相手の最深部まで、ピッチのあらゆるゾーンでトライアングルを作る形を徹底させることができたのは、モンテッラが率いたカターニャやフィオレンティーナだけだ。
フィレンツェでの3シーズン目を迎えたモンテッラは、今やチームを完全に自らの手足としている。1月の補強によって、チームの完成度はより高まった。
FWジラルデイーノ&MFディアマンティの広州恒大コンビを加え、より多彩になった攻撃オプションの中でも、対戦相手が今最も警戒するのは、スピードと突破力を持つサラーに1トップのFWイリチッチと右サイドをえぐるMFホアキンを加えた3トップの形だろう。