セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
敵地無敗の“旅行代理店モンテッラ”。
同世代から抜け出した名将とフィオ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/03/18 10:40
現役時代は卓越した技術と裏への飛び出しでゴールを量産したモンテッラ。イタリア代表ではインザーギやビエリなどとの競争で出場機会は多くなかったが、指導者としては一歩先んじた印象だ。
国内カップ戦でも、王者ユベントスをアウェーで撃破。
一大観光地フィレンツェの新“旅行代理店”に率いられたヴィオラは、イタリア国内の遠征にも強い。
今月5日、フィオレンティーナはコッパ・イタリア準決勝の1stレグを戦うため、北都トリノに乗り込んだ。相手は、仇敵ユベントスだ。
序盤からハイプレスで攻め立てたフィオレンティーナが、11分の相手CKからカウンター攻撃に転じた。中盤でボールを受けたMFサラーが60mを独走し、追いすがるマーカー2人をぶっちぎって、GKストラーリが守るゴールの右へ突き刺した。
一時同点とされるも、56分に敵陣でパスカットしたMFホアキンのアシストを受けたサラーが、勝ち越しゴールを冷静に流し込んだ。
フィオレンティーナにとって値千金の先勝は、敵地トリノで怨敵相手に挙げた7年ぶりの勝利だった。ヴィオラは、コッパ・イタリアの2年連続決勝戦進出へ王手をかけた。
「サラーの野郎、若いくせにやりやがるぜ」
難攻不落のユベントス・スタジアムを陥落させ、試合後、屈辱に声を無くした場内を悠然と歩くサラーに、ポジションを争う天才肌MFディアマンティも舌を巻いた。
「速いわ、テクニックはあるわ、おまけに2ゴールだ。サラーの野郎、若いくせにやりやがるぜ」
2月のデビューからユーベ戦までの7戦で6発、瞬く間にフィレンツェ市民を虜にした“エジプトのメッシ”サラーは、今冬の市場でチェルシーに高値売却したMFクアドラドとのトレード・オペレーションによってやってきた。
やる気を無くしていたクアドラドが3300万ユーロで売れ、今季終了までのレンタル期間中、サラーのサラリーはチェルシー払い。しかも契約には、来季終了後に破格ともいえる1600万ユーロで買い取りオプションまでつけてくれたのだから、フィオレンティーナ上層部は笑いを噛み殺すのに苦労しているはずだ。
「正直言って、こんなに派手な活躍は期待してなかった。クアドラドと似たタイプだが、より得点力がある」と、指揮官も嬉しい驚きを隠さない。