野球クロスロードBACK NUMBER
オープン戦初登板のロッテ・田中英祐。
「脱・京大」のために必要なものは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/03/12 11:50
QVCマリンフィールドの強い風について田中は「もっと強い日もある。対策を練りたい」と語っていた。
田中は、「京大」だから選ばれたのではない。
野球の結果とは、すべて過程の積み重ねで成り立つものだ。
頭では理解しても体が反応してくれない。だからこそ選手たちは、自分本位にならず、時に指導者や先輩たちの意見を効率よく取り入れながら鍛錬に励む。そうやって、自分の理想の形を手にしていくのだ。
とはいっても、首脳陣は「京大の田中」だから苦言を呈しているわけではない。
全国に名立たる名門・京大で初めてプロになった選手。「SFA(表面力測定装置)における水和構造の逆計算理論」という、難解な卒業論文を発表した秀才である。そのせいか、世間が何かと「京大」を強調したがるのも無理はない。
だが、忘れてはいけないのが、田中は最速149kmのストレートをはじめ、投手として能力を認められたからこそドラフト2位指名を受けた、という事実だ。
プロには、アマチュア時代に「無名」と呼ばれながら結果を残している選手などいくらでもいる。田中だってその予備軍であり、こと野球に関しては、出身がたまたま京大だったに過ぎないのだ。
田中の才能を証明する、ふたつの空振り三振。
光るものはある。だからこそ、シーズン開幕間近のこの時期までローテーションを争えているわけだし、何より、オープン戦でも才能があることを証明していた。
ふたつの空振り三振がそうである。
6回の三振は、フルカウントから田村龍弘のサインに首を振り、7回も1ストライクから3球連続ファウルで粘られながら、最後は自らのウイニングショットであるスライダーを信じ、結果に繋げた。
「今日は自分のピッチングと意図したアウトを取ることがテーマでしたが、三振を取ったスライダーは自分のなかで自信があるボールですし、空振りが取れてよかったです」
終始悔しさを滲ませていた田中だが、これには納得の表情を見せていた。「藤井に投げた3-2からのスライダーは本当にいいと思った」と落合コーチが賞賛すれば、伊東監督も「田中君はね、いいボールはあったんで」と評価して、次の登板機会も明確に示した。
「最初は落ち着いてアウトを取っていたし、6回もフォアボールの後のピンチでも最後は三振を取ったり、いいところはあった。これまでチームを離れていたり、チャンスもそんなに与えていなかったんで、これで二軍に落とすというのもね。だから、もう1回投げさせます。追試ですね」