Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「湘南はJ1に残れればいいチーム」
浦和の指揮官に、敵は見えているか。
posted2015/03/11 10:40
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
好ゲームというのは、両チームの“共同作業”によって生まれるものだ。
“主役”は勝ったチームだが、敗れたチームが“助演男優賞”に値する輝きを放たなければ、主役も引き立たないし、ゲームという名の作品も引き締まらない。
その点で言えば、今季J2から昇格した湘南ベルマーレを浦和レッズが3-1で下したShonan BMWスタジアム平塚での開幕戦は、まぎれもなく好ゲームだった。
立ち上がりから、前評判どおりのハイプレスと運動量で湘南が先手をとる。一の矢がかわされても、二の矢、三の矢を放つ。インターセプトを狙い、横パスをさらい、背後から突くと、雪崩のような迫力で浦和陣内に攻め込んでいく。
「勝たなきゃいけないという気持ちで臨んでいた」と言ったのは湘南のキャプテン、永木亮太である。ピッチ上からは“浦和を食ってやる”という気迫がびんびん感じられた。
湘南のプレッシングがいかに鋭く、迫力のあるものであったかは、ディフェンスラインでボールを回しながら攻撃を組み立てていくことを信条とするはずの浦和が、ロングボールを蹴って湘南のプレスを回避していたことからも窺えた。
風下の影響もあっただろうし、連敗中のため、セーフティに試合に入りたいという思惑もあっただろう。平川忠亮は「あえてボールを持たせるのも作戦だった」と明かした。だが、いずれにしても、湘南の圧力が浦和に戦い方の変更を選ばせたのは確かだった。
湘南が先制するも、浦和は徐々に対応し……。
圧巻だったのは、24分だ。大竹洋平への縦パスを攻撃のスイッチに、湘南の選手たちが一気に駆け上がる。大槻周平、菊池大介、三竿雄斗とつながったときには、浦和のゴール前に6人の選手がなだれ込んでいた。大槻のシュートは、ゴールライン上で槙野智章が身をていして防いだが、流れは湘南にあった。
微妙な判定だったが、PKによって湘南が先制したのは、36分のことだ。
興味深かったのは、ロングボールが多く、また、湘南の選手に圧倒されることの多かった浦和の選手たちのプレーに、次第に変化が見られたことだ。