Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「湘南はJ1に残れればいいチーム」
浦和の指揮官に、敵は見えているか。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/03/11 10:40
浦和史上初となる連続での4シーズン目となったミハイロ・ペトロヴィッチ監督。昨シーズン終盤にも会見で苛立ちを見せることがあった。
浦和の敵はサポーターでもメディアでもない。
2012年のシーズン前のことだ。チョウ・キジェ監督が就任したばかりの湘南と練習試合を行なった浦和は5-1で圧勝した。その試合後、ペトロヴィッチ監督は、リスクを顧みずハイプレスを仕掛け、勇敢に挑んできた新米監督に対して、こんな言葉で激励したという。
「こういうサッカーをやるなら、絶対にやれ。どうしてJ2にチャレンジするチームがないんだと、俺はずっと思っていたんだ」
どちらも同じ人物の発言である。この差は、いったいどうしたことだろう。
阿部勇樹が感情をむき出しにして仲間を鼓舞し、興梠は負傷を恐れずゴール前に飛び込んだ。宇賀神は胸のエンブレムを強く握りしめて「レッズ愛」をアピールし、流れの中で果敢に攻撃参加した那須はゴールを決めたあと、何度もガッツポーズを繰り返した。
選手たちは自信と勇気を取り戻し、巻き返しを誓っている。だが、肝心の指揮官が戦う相手を間違えていたら、チームは正しい方向には進めない。
浦和の敵は、もちろんサポーターでも、レフェリーでも、メディアでもなく、目の前の対戦相手だ。いや、もっと言えば、自分たち自身との戦いでもあるはずだ。
苦しんで手にした今シーズンの初勝利が、指揮官の何を変えるだろうか。