Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「湘南はJ1に残れればいいチーム」
浦和の指揮官に、敵は見えているか。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/03/11 10:40
浦和史上初となる連続での4シーズン目となったミハイロ・ペトロヴィッチ監督。昨シーズン終盤にも会見で苛立ちを見せることがあった。
奪った後にマイボールを確定させることが大事。
湘南のスタイルと良く似たドイツのドルトムントを例にすると、昨年までヴァンフォーレ甲府の監督を務めていた城福浩氏の分析が分かりやすい。
「ドルトムントの選手たちは、ボールを奪われたらトップスピードで奪い返しに行って、取り返すとそのままのスピードでパンパンパンと3、4本パスをつなぐ。奪われる危険性が去ったところでスピードダウンして落ち着かせると、そこからまた攻撃のスピードをアップさせる。こうした連続性が出せるのは、動きながらのスキルが非常に高く、奪ったあとにつなげるから。そこで奪われると、行ったり来たりになって、スタミナがいくらあっても足りない」
湘南にとっても同じことが言えるだろう。トランジションの意識も、仲間をサポートする意識も、すでに頭と体に刷り込まれている。課題は奪ったあとのつなぎの質で、その向上こそが、湘南の今後の伸びしろであって、可能性だ。
「湘南はJ1になんとか残れればいいチーム」
一方、ACLとゼロックス・スーパーカップで続いていた連敗を3で止め、ようやく今季のスタートを切った浦和に関して気になったのは、ピッチ上ではなく、試合後の会見場での出来事だ。
シーズンインしてから、試合中にブーイングしたサポーターに苦言を呈したかと思えば、レフェリングについての批判を繰り返し、結果だけで判断するメディアに対しても不満を露わにしていたペトロヴィッチ監督だったが、この日も試合後にこんな発言があった。
「試合前の報道では『湘南がどれだけJ1で旋風を巻き起こすのか』あるいは『湘南が浦和に対してどれだけやれるのか』と注目を集めたゲームだったと思うが、少しサッカーがお分かりになる方であれば、浦和と湘南の違いは試合が始まる前から分かるのではないか。もちろん湘南をリスペクトするし、良いチームだが、湘南はJ1になんとか残れればいいというチームじゃないかと思っている。もう少しサッカーを現実的に見られた方がいいのではないか、と思うことがたまにある」
その真意は、湘南をくさすことにではなく、メディアの報道の仕方に対して皮肉ることにあったように聞こえるが、どちらにせよ、必要のない発言ではなかったか。