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阿部勇樹を叫ばせた浦和サポの罵声。
彼らの挑戦に尊敬と、少しの時間を。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2015/03/06 10:30
非難の声を上げるサポーターに熱弁をふるう阿部勇樹。彼がここまで感情的になる姿はかつて見たことがない。
このクラブは少しずつ面白さを身にまとい始めている。
僕個人の意見を少し語ろう。
たしかに浦和レッズはいくつかの弱点をこの数年間改善できないでいる。追い込まれて、プレッシャーがかかればかかるほど、精神的に不安定になり、力を出せなくなってしまうプレーヤーもいる。まるで見ている側が侮辱されているかのように感じてしまうような、安易なバックパスや、ミスパスも見せてしまう。
しかし一方で、ペトロヴィッチの率いるこのクラブは少しずつではあるが面白さも身にまとい始め(少なくとも3年前よりは一昨年、一昨年よりは昨年の方が面白い試合を見せるようになった)、未だタイトルは獲得できていないものの、優勝を争える位置につけられるようになった。優勝を狙う、という言葉に説得力が備わり始めた。
たしかにペトロヴィッチのサッカーは難解なサッカーであるし、少し皮肉な言い方をすれば頑迷過ぎるのかもしれない。しかし、かといって、今さら堅守速攻のサッカーに切り替えるのも無粋というものだ。
いつも思い出す、ワシントンとポンテの時代。
結果が大事なのはもちろんわかる。しかし、僕はこの議論になるたび、ワシントンとポンテの時代を思い出す。あのときの浦和レッズはとにかくこの2人のブラジル人にすべてを任せ、この2人はお膳立てをし、ゴールを決め、チームを叱咤激励してくれた。そこには確かに結果が残ったが、同時にリーグ戦の終盤にはある種のしらけた空気、素直には喜べない空気が漂っていた。僕自身、ポンテに大声で罵られたことがある。
なんで勝ってるのにお前は喜んでないんだ! と。
僕は答えた。
だって、勝負を決めてるのはいつも君かワシントンじゃないか!
戻るのは、さほど難しいことではない。もっと簡単な方法をとればいいじゃないか、と思う日もないわけではない。しかし今はまだ、もう少し待つべきだと、脳みその中のどこかで誰かがささやいている気もする。
この壁を突き抜ければ、そこにはこの4年間味わってきた悔しさや、憤りや、苛立ちや怒りを消し去ってもなお余りある大きな喜びが待っているのではないか、そんな気がする。
あるいは、そんな気になりたい自分がいるだけなのかもしれないが。