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阿部勇樹を叫ばせた浦和サポの罵声。
彼らの挑戦に尊敬と、少しの時間を。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2015/03/06 10:30
非難の声を上げるサポーターに熱弁をふるう阿部勇樹。彼がここまで感情的になる姿はかつて見たことがない。
那須大亮の退場は、鈴木啓太のパススピードに理由が。
試合後、レッズの選手たちはピッチを一周してサポーターに頭を下げた。
スタンドから、特に最前列に陣取ったサポーターたちからは、猛烈なブーイングと野次が選手たちに飛んだ。
その異常なまでの厳しさと激しさは、この3連戦の結果にのみ向けられたものではない(と僕は思っている)。昨季のJリーグ後半戦からたまり続けてきたガスを彼らは躊躇なく吐き出していた。
やる気あんのかよ!
もちろん選手にやる気はあるだろう。
後ろで回してっからこうなっちゃうんだよ!
たしかに浦和レッズには、依然として前線に出し手が見つからないと、後方へ大きく戻す癖があるが、それは必ずしも全否定されるべき戦術でもない。
問題があるとしたら、そのパススピードの遅さだろう。たとえば、那須大亮が退場を宣告されたミスは、そのバックパスを出した鈴木啓太のパスにスピードがなかったために、相手選手のプレッシャーがより効果的に那須にかかってしまった、とも分析できる(少なくともピッチサイドの僕の目にはそう映った)。
これまでに聞いたことがない、阿部の感情的な叫び。
スタンドからのブーイングと野次と要求は激しく、攻撃的だった。
試合後のテレビインタビューに応えていたために一人遅れて挨拶に回っていたキャプテン阿部勇樹にも、様々な声がなげつけられていた。
バックスタンドで頭を下げ、北側のゴール裏にさしかかったときだった。普段は物静かな阿部が、突然スタンドに向かって叫び始めた。
「だからさ! とにかく1勝しなきゃ始まらないんだよ! あともう4試合しかないんだよ! まず勝たなきゃダメなんだよ! おれたちやるからさ! だからさ、一緒に闘ってよ!」
阿部の瞳は涙をうっすらとたたえていたようにも見えたし、ただ単に汗をかいているだけにも見えた。しかしその声は、これまでに聞いたことがない、激しく、感情的な声だった。歴戦の勇士である阿部勇樹にあそこまで声を絞らせ、あそこまで感情をむき出しにさせたことで、浦和レッズのサポーターたちは満足だっただろうか? あるいは……。