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僕らがF1でホンダを応援するワケ。
もう一度見たい、本物の“反逆精神”。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2015/02/20 10:45

僕らがF1でホンダを応援するワケ。もう一度見たい、本物の“反逆精神”。<Number Web> photograph by Getty Images

2015年2月10日の記者発表イベントに際し、東京・青山にあるホンダ本社前にズラリとならんだ往年のF1マシンたち。

正しいアイディアなら、部下の命令無視も不問に付す。

 当時のF1は馬力が最優先されていたため、大量の空気と燃料を取り込んで燃焼室で爆発させていた時代だった。第一期のF1活動からホンダのエンジンを開発してきた川本が考えるエンジンも、当然そうだった。しかし馬力を追求するあまり、ホンダのエンジンは復帰当初、壊れまくった。

 そこで、開発を担当していた市田は川本とはまったく異なる発想で新しいエンジンを開発していく。それは、燃料噴射と点火のタイミングを電子制御でコントロールすることで、燃料を効率良く燃焼させ、馬力を出しつつもエンジン本体の負荷を抑えた燃費にも優れた超高性能エンジンだった。

 ホンダという企業の素晴らしさは、上司の命令を無視したとしても、一旦そのアイディアが正しいと判断されれば、それぞれのメンツを捨てて積極的に開発を続けさせるところにある。

「市田から『こんなエンジンができましたから見てください』と言われて見ると、私が指示していたのと全然違うものだった。(馬力を)とことん追求しないで、安易に違う方向へ行くなと指示していたのに、彼らはそれを無視してやっていた。でも、これが大正解だった」(川本)

初日に最下位だからこそ、ホンダには希望がある!?

 2015年2月1日、スペイン・ヘレス。7年ぶりにF1に復帰したホンダの今シーズン最初のテストは、わずか6周に終わった。

 タイムはトップから18秒遅れの最下位。

 この結果に不安を抱かなかった日本人はいないだろう。

 しかし、私はこの結果に、大いなる希望を感じている。それは、ライバルたちより1年遅れて新しいパワーユニットで参戦してきたホンダが、ライバルのコピーをしたコンサバなパワーユニットを開発してきたのではなく、まだどのメーカーも踏み入れたことがない新技術を搭載してきたのではないかと考えているからだ。

 もし、テストを開始してすぐに3番手や4番手のタイムを出せば、今シーズンある程度の成績は残せるかもしれない。しかし、それでは1年先を走っているメルセデスに追いつくことは永遠にできない。逆に、初日最下位だったということは、ホンダが非常に複雑なシステムを導入している可能性がある――。

【次ページ】 絶対王者メルセデスを、あえて真似しない。

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