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原監督「コメントも変わってきた?」
新主将・坂本勇人が探る新たな世界。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2015/02/12 11:30
2014年は144試合に出場し、打率.279、打点61、本塁打16という成績だった坂本勇人。決して悪い数字ではないが、原監督も期待が大きいだけにもどかしい思いをしていることだろう。
巨人・原監督が気にする坂本勇人の「コメント」。
実は巨人の原辰徳監督の中にも同じように、責任を持って人に何かを伝えることで選手は成長する、という考えがある。
「少しメディアの人に対するコメントも変わってきましたか?」
宮崎での巨人キャンプ第2クールが始まった2月6日、全体練習が終わりにさしかかって報道陣の取材を受けたときだった。
今季から阿部慎之助内野手に代わって、新主将に就任した坂本勇人内野手の話題になった。坂本は腰痛による別メニューから復帰して、この日、一軍の練習に合流。練習の姿を見てコメントを求めた報道陣に、すかさず指揮官が逆取材したわけである。
「実はキャプテンになったときに坂本にはこんな話をしたんです」
原監督は説明した。
「これまでキミの言葉は、坂本勇人という個人の言葉だったけれども、(キャプテンになったことで)これからはチームの言葉になる。だからきちっとメディアの取材にも対応して、ちゃんと話をしなくちゃいけないよ、と伝えました」
今年はこれまでのチームを解体して、まったく新しいチーム作りに挑むことを宣言し、「阿部、村田(修一内野手)、内海(哲也投手)、杉内(俊哉投手)に頼らないチームを作る」と語る原監督。もちろんこの言葉にはベテラン勢の反発心を駆り立てる狙いもあるが、もう一つには、言葉通りにチームの世代交代の推進という大きなテーマもある。
その新しいチームの核になって欲しい、ならなければならないと考えているのが、この坂本なのである。
チームの顔でありながら、結果には物足りなさも。
プロ9年目。もはや若手ではなく中堅選手として人気、実力ともにチームの顔の一人となったが、指揮官の中ではどこかに物足りなさを感じる部分があるのだ。
「結果からいったら伸び悩みということでしょう」
原監督は言う。
「試合の中での精神的な強さとか、そういうものは持っている。ただ、ここのところは目標値が低くなっているような気がしてならない」
実際、プロ3年目の2009年に3割6厘をマーク。'12年には最多安打のタイトルを獲得して3割1分1厘のハイアベレージを残すなど順調に成長の足跡を残してきた。しかし、その後の'13年は2割6分5厘、昨年は2割7分9厘と打率は低迷。ここ一番での勝負強さは監督も認めるところだが、持っているポテンシャルからすれば、その力を出し切れていない物足りなさを感じるのも確かなのである。