坂本勇人という個の言葉から、チームの言葉に。

　そうした低迷を打ち破る一つの道具が、言葉だと指揮官は考える。

「今までは坂本勇人という個の言葉しかなかったけど、これからはキャプテンとして話すことで、否が応でも常にチームという視野が入ってくる。そのことを本人が意識できれば、少し見えてくる世界も変わってくるはずだし、それは絶対にプレーヤーとしての幅にもつながるはずなんです」

　もちろん坂本にこれまでチームという視野がなかったわけではない。ただ、それは漠然と頭の中で理解しているものであって、外に向けて言葉としてアウトプットすることで、論理的に整理され、より明確になる。

　言葉を発することで、発する努力、意識をすることで、見えてくる世界が変わる。そこがさらなる飛躍へのステップボードになるというわけだ。

「声がないなーと思ったから、意識的に出しました。雰囲気を見ながら」

　合流初日。報道陣に囲まれるとこう語った坂本。練習では人一倍、声を出して新主将としての意識を前面に出した。

　話すためには観察して、理解して、論理立てなければ、相手にはうまく伝わらない。感覚ではない新しい世界を意識させる。坂本を新主将に指名した原監督の狙いもそこにある。