プロ野球亭日乗BACK NUMBER
原監督、プレーヤー部門で殿堂逃す。
曖昧な投票基準と、問われる「見識」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2015/01/29 10:50
名指揮官として一時代を築いている原辰徳監督。プレーヤーとしての殿堂入りは逃したが、エキスパート部門での選出が濃厚だ。
現役としての成績で見れば殿堂入りには届かないが。
津田氏の現役時代10年間の成績は、286登板で49勝41敗90セーブ。タイトルはセーブ王を1回獲得しただけである。この数字が殿堂入りにふさわしいかは、このときも論議の的となった。ただ、それこそ津田氏が残した鮮烈なピッチングと非業の死が野球ファンの心に強く刻まれているという副次的要素事実が、この時の投票の背景にあったはずである。
要は成績ではなく「記憶に残るプレーヤー」として、津田氏は殿堂入りを果たした。それを西村氏は支持したはずだった。このときはまったく問題にしなかった現役時代の成績を、原監督のケースでは突然持ち出して、殿堂入りにふさわしくないと切り捨てる理由にしているのだ。
そこに西村氏の恣意があるのではないだろうか。
実はこの問題は、西村氏個人だけのことではないのである。西村氏については、朝日新聞の人気コラムで自らの投票を明らかにして原監督の落選を取り上げたから、あえてその点について取り上げることになった。しかし以前から指摘してきたように、殿堂入りの投票ではその基準の曖昧さ、投票者による非常に個人的な選考基準(ありていに言えば好き嫌い)が当選と落選の分かれ目になり過ぎていることが残念でならない。
平等でフェアな見識こそが期待されている。
三冠王に輝いた元阪神のランディ・バース内野手や元阪急のブーマー・ウェルズ内野手、また3割2分とプロ野球歴代1位の生涯打率を残した元ロッテのレロン・リー内野手らが、未だに殿堂入りから排除されている。
この事実も根っこは同じなのだ。
全てが好きか嫌いかだけで決まっているとは言わない。ただ、極めて個人的な都合で、そのときどきでクルクル変わる基準で投票が行なわれている。西村氏のコラムは図らずもその事実を露呈させているわけである。
経験15年以上のベテラン野球記者に与えられている殿堂入りの投票権。彼らがその権利を与えられているのは、平等でフェアな見識を見込まれているからに他ならない。それなのにこんな曖昧な基準で投票が続くとすれば、それは野球殿堂の価値そのものを貶めるものでしかない。