松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹が、笑顔を取り戻すまで。
無茶でも手探りを止めなかった1年間。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byAFLO

posted2015/01/27 10:30

松山英樹が、笑顔を取り戻すまで。無茶でも手探りを止めなかった1年間。<Number Web> photograph by AFLO

1月のヒュンダイ・トーナメントオブチャンピオンズで3位Tとなり、好スタートを切った松山英樹。米ツアー2年目、表情の変化が彼の精神的な成長を物語っているようだった。

強ばっていた表情と、大いなる無理。

 そこに無理が無かったのかと言えば、本当は大いなる無理があったのだと思う。だが、「プロならば、かくあるべき」と信じる理想を追い求めれば追い求めるほど、彼の口を衝いて出たのは否定形の言葉。表情は日に日に強ばり、笑えない、語れない……。

 そんな痛々しさがピークを迎えたのは、米ツアーで初めて最終日最終組を経験した5月のクラウンプラザ招待のときだった。スタートホールはパー5。フェアウェイからの第3打は「完璧に打ったと思った」が、実際のボールはピン奥10mに止まっていた。

「あんなにオーバーすると思ってなかった。そこから警戒しながら打ったら、昨日までとは全然違うスイングになり、ショットが狂い始めた」

 瞬く間に優勝争いの蚊帳の外に押し出され、巻き返せないまま10位に終わった。悔しさを噛みしめながら、いつも以上に「ない」を連発。「1発のミスをすぐに取り戻せる力は今はない」「最終日のプレーができていない」「練習が足りない」「精神的にも強くなっていかなければいけない」

 激しい自責の言葉を連発した翌週、松山はメモリアル・トーナメントで米ツアー初優勝を飾った。勝利がうれしくないわけはない。だが、それでもなお彼の表情は明るくならなかった。前週に口にした「ない」「ない」「ない」の内容は、優勝したからと言って根本解決されたわけではなく、その現実を厳しく受け止めた松山は、シーズンエンドまでずっと表情を強ばらせたままだった。

今年度のシーズン開幕戦、松山の表情が一変していた。

 松山の表情が明らかに一変したのは2014-15年シーズンの開幕戦、フライズコム・オープンのときだった。憑き物が落ちたように爽快な笑顔。彼を変えたものは、開幕戦を迎えるまでの3週間のオフだった。

「休んだことで気持ちがリセットされた。以前はグリーンに乗っても、ちょっと遠いといらいらしていた。体は疲れていないのに、気だけ疲れている感じだった。でも、今はそれがない。休むことがこんなに大事だと思っていなかった」

【次ページ】 必死の思いが、松山に無茶な手探りを続けさせた。

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