松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹が、笑顔を取り戻すまで。
無茶でも手探りを止めなかった1年間。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

PROFILE

photograph byAFLO

posted2015/01/27 10:30

松山英樹が、笑顔を取り戻すまで。無茶でも手探りを止めなかった1年間。<Number Web> photograph by AFLO

1月のヒュンダイ・トーナメントオブチャンピオンズで3位Tとなり、好スタートを切った松山英樹。米ツアー2年目、表情の変化が彼の精神的な成長を物語っているようだった。

必死の思いが、松山に無茶な手探りを続けさせた。

 広大なアメリカ大陸を転戦し、タフなスケジュールをこなしながら層の厚い米ツアーを戦っていく上で、心身の休息は絶対的に不可欠だ。が、未知の世界で未知の戦いに挑み始めた松山は、最初のうちはその大切さがわからず、上手な休み方も知らなかった。

 休んでなんかいられない。練習しなきゃ。がんばらなきゃ。そんな必死の想いが、昨季の彼に少々無茶な手探りを続けさせた。ブレーキを踏むにも、どうやって踏んだらいいのか、いつ踏んだらいいのか、方法もタイミングもわからなかった。それは「やったことないから、わからない」と言った冒頭の家探しと、まさに同じだったのだろう。

「わかんないっすよ。だってほら、これまで米ツアーで戦ったことないから」

 本当はそう言いたかったのかもしれない。だが、ストイックな松山は「わからない」とは決して言わず、黙々と未知の世界で戦い続けた。

松山が何かに気づいたときの笑顔を、どんどん見たい。

 オフを経て、休むことの大切さや休み方がひとたびわかれば、笑顔もこぼれ、言葉も弾む。心身が和らげば、持てる技を存分に発揮することもできる。そうやって1つ1つ、小さな発見を重ねながら、米ツアー選手として成長していく。

 2015年は年明け早々からハワイで優勝争いに加わり、惜敗ではあったが、数字の上では3位と好発進を切った。今年、これから松山は何に気づき、それをどう咀嚼していくだろうか。

「今度は、こんなこと、わかったっすよ」

 そう言って笑う松山をどんどん見たい。彼の小さな発見、小さな進化を、ここでどんどん綴っていきたい。彼が目指すメジャー優勝は、きっとその先にあると思うから――。

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