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今最も好調な日本人、清武弘嗣。
逆転のメンバー入りが代表を変える?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2014/12/29 10:40
ブンデス前半戦で3得点を挙げた清武だが、ここ最近はドルトムント戦でのFKなどセットプレーでも冴えを見せている。日本代表には遠藤、本田というキッカーがいるが、その高いセンスを発揮する場面があってもおかしくない。
ドルトムント戦での決勝点がターニングポイントに。
そんなタイミングで迎えた、10月25日のドルトムントとのアウェーゲーム。この試合こそが、清武にとってのターニングポイントとなった。
この試合で清武は決勝点となるFKを直接ゴールに蹴り込み、1-0の勝利に大きく貢献した。昨シーズンまでハノーファーが苦手としていたアウェーゲームで、しかもドルトムントを相手に勝ち点3をつかんだ効果は大きかった。
清武が批判されているのを知っていたチームメイトは、試合後に清武を猛烈に祝福していた。壁をどんどんと叩く音、声にならない雄たけび、そしてチームメイトのこんな声がロッカールームの外にまでしっかりと聞こえてきた。
「キヨッ、キヨッ、キヨー! キヨッ、キヨッ、キヨー!」
このゴールを喜んだのは、選手たちだけではない。
「これまで清武が見せてきたプレー以上のことが出来ることは、彼自身が理解しているはずだ」(デュフナーSD)
「彼はこれから『違い』を見せてくれるはずだ」(コルクト監督)
清武への批判に対して、そのように語っていたチームの首脳陣たちも、この試合の活躍には一様に胸をなでおろしていた。
シュティンドル復帰後、運動量を武器に攻撃を活性化。
ドルトムント戦での活躍以降、清武はさらにコンディションを上げていく。
そして、その能力がさらに活かされるようになったのは11月22日のレバークーゼン戦で、怪我の癒えたシュティンドルがスタメンに名を連ねるようになってからだ。
4-2-3-1の2列目に左から清武、シュティンドル、ブリアンと並んだ3人が、バイタルエリアのいたるところでトライアングルを作り、相手の守備を切り裂いていく。そこに前半戦で7ゴールをあげたFWのホセルが絡んでいく攻撃には迫力がある。実際、それまで得点力不足を指摘されていたチームは、レバークーゼン戦以降は1試合平均で2ゴールをあげている。
データに目を向けても、清武の活躍ぶりは一目瞭然だ。
レバークーゼン戦以降の6試合のうち、後半開始早々に相手の強烈なタックルを右ひざ付近に受けて途中交代を余儀なくされたヴォルフスブルク戦を除く5試合で、走行距離はすべてチームトップ3に入り(2試合でトップを記録)、1試合平均11.5kmもの距離を走っている。とくに前半戦最後のフライブルク戦では、前の試合から中4日で行なわれ、その間に打撲のために別メニューでの調整を余儀なくされた日があったにもかかわらず、チーム最長となる11.93kmを駆け抜けた。