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今最も好調な日本人、清武弘嗣。
逆転のメンバー入りが代表を変える?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2014/12/29 10:40
ブンデス前半戦で3得点を挙げた清武だが、ここ最近はドルトムント戦でのFKなどセットプレーでも冴えを見せている。日本代表には遠藤、本田というキッカーがいるが、その高いセンスを発揮する場面があってもおかしくない。
守備タスクの多さと、右サイド中心の攻撃への葛藤。
まず苦しんだのが、与えられた守備の役割だった。攻撃ではかなり自由を与えられていたが、守備についてはコルクト監督からたびたび指摘されていたし、シーズン序盤には試合中にベンチ前に出た監督から、守備について細かく指示を受けることもあった。当時、清武はこう話していた。
「今はどうしても守備に使う時間が多いから、攻撃ではパッとしない。攻撃と守備と半分、半分に出来たらいいかな。ただ、このチームの約束事が(プレッシャーをかけに)前から行くことなので、守備で力を抜くことは出来ないです」
さらに、シーズン序盤のハノーファーは右サイドが攻撃の中心となっていたため、逆サイドにいる清武が孤立するシーンも少なくなかった。
ハノーファーに加入してから清武が、もっとも苦しんだのは第6節のシュツットガルト戦から第8節のボルシアMG戦にかけて3連敗した時期だろう。とりわけ問題とされたのが、この3試合でチームが1ゴールもあげられなかったことだ。
「450万ユーロでやってきた清武に失望」という報道も。
ボルシアMG戦に敗れたあと、地元メディアが一斉に批判の矛先を向けたのが新加入選手である清武だった。
例えば、キッカー誌には以下のように書かれた。
「清武にはまだ(チームに)借りがある。ボルシアMG戦ではコルクト監督は450万ユーロ(※現在のレートで約6億3千万円。430万ユーロと報じるメディアもある)でやってきた選手に失望させられた」
それほどの批判を受けたのにはもちろん、理由がある。
そもそも、ハノーファーが清武を獲得した最大の理由は、昨シーズンは10番を背負い、10ゴール、9アシストでともにチームトップの成績を残していたフスティがチームを去ったことだ。ドイツメディアはフスティと清武を比較して、厳しい評価を下していた。この時期はシュティンドルが怪我で戦列を離れていたし、清武がチームの戦いになじんでいる最中だったが、手厳しいメディアがそうした事情を考慮することはない。なぜなら、清武の獲得にハノーファーが要した金額はクラブ史上で3番目の額だからだ。