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代表を落選、クラブでは悪戦苦闘。
それでも大迫勇也は「迎合」しない。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/01/06 10:40
大迫勇也の所属するケルンは1トップを採用している。FW以外での出場を強いられることも多いが、「やりたいのは一番前」という意志は折れていない。
確かに大迫は、器用さを持ち合わせてはいるが……。
確かに、大迫は“それなりに”パスは出せる。逆に、現在フォワードとして出場することが多いウチャは他のポジションで起用されるイメージがわくほどに器用な選手ではない。その代わり、彼は現在のチームの一番手のフォワードとしてケルンの中で最多となる6ゴールを決めている。ファンからの人気もあり、彼がスタメンから外れたときにはファンが彼の出場を求める「ウチャコール」がわきあがったりもする。
大迫がウチャと比べて能力が大きく劣っているわけでもないのにもかかわらず、トップ下のポジションを甘んじて受け入れるようでは、損ではないのか。そう問うと、大迫はこう答えた。
「前でやりたいけど、それは監督が決めることだからね。みんながやりたいポジションを出来るわけじゃないし。それに、一つのポジションしか出来ないというのも選手としてはもったいないから」
しかし、ゴール前の強さを身につけるといって海を渡った選手が、高校サッカーの歴史では日本人の誰よりも多くのゴールを記録した選手が、本来のポジションではないところで起用される状況をやすやすと受けいれるのは不思議でならなかった。その点について、大迫にさらに問いかけると、さすがに声を荒げてこう返した。
「もちろん、やりたいのは一番前(のポジション)だよ! そこがやりたい。でも、それは前提として、今はそうではないということ」
スペースを突く動きは評価されず。
実は、大迫が1トップのポジションでスタメン、フル出場を果たした試合が1試合だけある。
11月2日のフライブルク戦だ。この試合では2度の決定機をつかんだが、いずれもシュートはゴールのわずか横に外れた。しかしそれ以上に目立ったのは、相手サイドバックの裏のスペースをつくような動きだった。
「(試合前の)ミーティングからそれを求められていたので」
試合後に大迫はそう明かしていたが、地元メディアはそうした役割については考慮せず、翌日のビルト紙などは最低評価となる6点(1点が最高で、6点が最低)をつけていた。
そして、この試合以降、大迫は一度もスタメンでプレーするチャンスは与えられていない。