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代表を落選、クラブでは悪戦苦闘。
それでも大迫勇也は「迎合」しない。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2015/01/06 10:40

代表を落選、クラブでは悪戦苦闘。それでも大迫勇也は「迎合」しない。<Number Web> photograph by AFLO

大迫勇也の所属するケルンは1トップを採用している。FW以外での出場を強いられることも多いが、「やりたいのは一番前」という意志は折れていない。

再びケルンの練習場をたずねることにした。

 シーズン前半戦も残り1試合となった12月17日、マインツとのホームゲーム翌日にケルンの練習場を再びたずねることにした。

 早朝から降り続く雨の中で、グラウンドはぬかるんでいる。前日の試合に出場しなかった選手、出場時間の短い選手たちがトレーニングに励んでいた。もちろん、前日の試合ではベンチ入りしながらも出番のなかった大迫の姿もそこにはあった。

 少ない人数で行なわれた5対5のミニゲームでは、チームメイトとのぶつかり合いにもひるまず、力強くシュートに行く姿も見られた。練習の始まる前や終わった直後には、仲間たちと談笑している。暗い表情をうかべることも、不満な態度をとるような様子はまったく見られない。

 練習が終わり、グラウンドから引きあげる大迫に声をかけた。ミニゲームでの力強いプレーについては「今日は地面が滑るし、難しかったけどね。気をつけているのは球際の勝負の部分かな」と答える。

「使い勝手のいい選手になってるんじゃないか」

 0-0で終わった前日のマインツ戦では、ケルンは交代枠を2つも残したまま試合が終わっていた。ホームゲームで引き分けの状態でも声がかからない状況も、我慢して受け入れないといけないと考えているのだろうか。

「我慢のしすぎも良くないけど……今は使い勝手の良い選手になっているから。そこをどう変えていくかが大事。前半戦が終わったら、もう1回、チームを作る時間があるから。そこでしっかりと、やれることをやっていくいことが一番かなと思っていますけどね」

 リラックスした表情で、大迫はそう語った。しかし、10月には決して自ら「使い勝手の良い選手」だとは認めることもなかった。一体、ここまでの間にどんなことを考え、悩み、そう語るまでになったのだろうか。その理由をたずねると、ゆっくりと話し始めた。

「うーん……どうなんだろうね。あのときも葛藤がありましたよ、使い勝手のいい選手になっているんじゃないか、と。代理人とも色々と話したし、他にも色々な人と話してきた。ただ、あのときはまず試合に出ることが一番だったから。試合に出てはじめて、吸収できることがあるし。

『今は試合に出られないのが一番良くない』と言われて、そうだと思っていたし。ただ、そこから徐々に徐々に、少しずつ、自分のやるべきことを考えていったら、やっぱり、自分に求められるのはゴール前(の仕事)だから」

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