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ストライカーか、オールラウンダーか。
久保裕也がスイスで悩む“スタイル”。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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posted2014/12/05 11:00

ストライカーか、オールラウンダーか。久保裕也がスイスで悩む“スタイル”。<Number Web> photograph by AFLO

ELナポリ戦、後半からピッチに立った久保裕也だったが、グズマンにハットトリックを許し敗戦。グループ突破は最終節の結果次第だ。

久保「日本人は黙々とやるじゃないですか」

 そんな異国の地で戦う久保は最近、自身の“日本人”という出自を強烈に感じさせられている。

 先発で出られない時期に、こんな出来事があったという。

「先発で出られていない時期に、監督といろいろな話をしたんです。練習後に個人的に呼ばれて、『もっと自分を先発で出して欲しいということをアピールして欲しい』と言われました。僕は真面目に一生懸命練習していたけど、監督からは、それが落ち込んでいるように見えたらしい。

 日本人は黙々と練習をやるじゃないですか。でもそれが反対に、アピール不足というネガティブな印象になっていた。監督は、もっとスライディングするとか、声を出すとか、わかりやすく見せろと。それならと思って、感情を普通以上に表に出すように意識しました。そうしたら監督やチームメイトとうまく行き始めて、先発にも戻れたんです」

ストライカーとしての自分を求められていない不満。

 久保はもともと、口数が多い方ではない。むしろ、どこか孤高なイメージもある。普段の生活でも、必要以上に周囲と行動を共にすることはないという。

 ただし、サッカーの試合においては別だ。主張の強い欧州の選手たちの中に入っても、「普通に要求しますし、何でも言うようにはしている」という姿勢を貫いている。いわゆる日本人らしいおとなしさは、本番の試合では必要ない。そのことを、あらためて肌で感じたのだった。

 先発に復帰しても、久保の悩みが消えたわけではない。次の問題は「なかなかゴールが奪えない」というより本質的なものだった。

 問題点は明快だが、その原因を考えていくなかで、久保は意外と問題の根が深いことに気づいたという。プレー面でも、“日本人”としての自分自身と向き合うことになる。

 彼が現在プレーするポジションは、4-2-3-1のトップ下。本田や香川真司など、欧州で戦う多くの日本の攻撃選手が得意とする位置だ。しかし、久保は違った。

「本来はトップでやりたい。でもそこには他のデカい選手がいる」

 自分は生粋のストライカー。京都サンガ時代から、そう信じてプレーしてきた。もちろん、トップ下に入ったからといって、ゴール前に入っていく意識を失ったわけではない。とはいえ、トップとトップ下ではおのずと求められる役割は違ってくる。

「僕自身にも問題はある。仕掛けとかシュートの場面で、結構アンパイなプレーが多かった反省はあります。ゴール前には入っていたけど、それだけで点が取れるわけじゃないから、もう少し攻めてもよかったかもしれない。あとは、監督からワンタッチ、ツータッチでのプレーを強く言われたのを守り過ぎていたというのも反省点です」

【次ページ】 「日本人は技術」という欧州での根強いイメージ。

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