野球善哉BACK NUMBER
故障防止に動き出した高野連。
タイブレークは消去法の苦肉の策?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAFLO
posted2014/11/18 10:40
2013年、春の選抜での連投で日米に論争を巻き起こした済美高校の安楽智大。今年のドラフトで楽天に1位で指名され、プロ入りした。豪腕は完全復活を果たすのか。
まずは、指導者の意識を変えなければいけない。
実は投手の疲労や登板過多について一番問題視しなければいけないのは、選手の健康面に対する指導者の意識の薄さだ。指導者に資格制度がない、という部分もあるが、いまだに根性論がまかり通り、ウォーミングアップとクールダウンをすれば自身の役目を果たしたと思っている指導者も多い。
試合では「選手が続投を志願した」という理路で、登板過多の正当性を語る。さらには「エースと心中した」と美談にしようとする傾向にある。
この夏の甲子園大会では、複数投手制を敷くチームが多かった。
筆者は、前年の安楽投手や春の再試合のこともあって、各チームがそういう方針をとったのかと前向きに捉えたが、「選手の身体を守るため」と口にした指導者は皆無に等しかった。
東北地区のある指揮官は「グラウンドを離れれば選手の健康面を第一に考えますが、試合が始まったら勝つためにと考えています。試合は勝たなければ、人は成長しませんから」と話していた。また、盛岡大付の松本投手の件に関しても、指揮官の関口清治監督は「チームが甲子園で勝つことを目指していた中で、松本一人に負担を掛けてしまったのかもしれない」と頭を下げていた。
いわば、これは“空気”のようなものだ。
いわば、これは“空気”のようなものなのだと思う。
日々の取材活動の中で感じるのは、個々の指導者の質に問題があるのではなく、これが今の高校野球界のスタンダードな思想だということだ。
つまり、変えなければいけないのはルールではなくて、勝利を最優先するあまり、選手たちの身体を守る決断ができない空気にあるといえる。
もしルールとして「制限」ができれば、指導者は自然と次の一手を考えなければならず、意識の向上が期待できる。