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ファーストサーブと「5~9打」。
錦織圭の強さを示す2つのデータ。
posted2014/11/14 16:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
ロンドンで行なわれているATPのツアー・ファイナルズ、錦織圭が準決勝進出だ。
それにしても、民放各局の朝のワイド番組は、まるでグランドスラム並みの扱いだ(いや、それ以上?)。「錦織の時間帯」を作れば視聴率を稼げるということなのだろう。
去年まではまったく取り上げることがなかったわけだから、驚き、呆れてしまうが、これだけのテニス熱はひょっとしたら1980年代以来ではないか。
さて、錦織の分析に移ろう。フェレール戦と、敗れたフェデラー戦を比較しながら話を進めていく。
試合前、ラオニッチの棄権が発表され、急遽、まったく別なタイプのフェレールが登場して錦織も面食らったことだろうが、フェレール戦勝利の鍵は、次のスタッツ(数字)だ。
・ファースト・サーブによるポイント
・5~9打でのポイント
フェデラー戦からの中1日で修正したサーブ。
まず、錦織はファースト・サーブの確率が58%だったが(本当は60%欲しい)、ファースト・サーブが入った時のポイントの確率は80%もあった。最初にサーブが入れば勝ち、そんな状況だったのだ。
対して、フェデラー戦はどうだったのか。
この試合での錦織のファースト・サーブの確率は54%、なおかつポイントの確率は68%にしか過ぎなかった。対するフェデラーが79%だったから、フェデラーのペースになるのは当たり前だった。
中1日置いて、錦織のサーブの改善が準決勝進出を引き寄せたのである。
「特にサーブの対策をしたわけではなかったんですが」と錦織はフェレール戦の後に振り返ったが、ネットに引っかけるフォルトが確実に少なかった。
サーブの時、トスが前に上がってしまうと、体が前に突っ込み、ネットにかける可能性が高くなってしまう。安定したトスが重要なのだ。