マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト注目の、2人の「リョウタ」。
伊東亮大と石岡諒太をプロで見たい!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/10/20 10:50
日本製紙石巻の、伊東亮大。アジア大会の代表にも選ばれ、主に代打で起用された。社会人ベストナインも経験し、プロに進む準備は整った。
常勝チームでレギュラーに座る石岡諒太。
“もう一人のリョウタ”は、実は常勝チームにいる。
JR東日本の石岡諒太内野手(22歳・187cm85kg・左投左打・神戸国際大付高)は、高校から入ってきて2年目あたりから、大事な試合でも右翼手、一塁手のレギュラーとして先発していた。
JR東日本といえば、社会人球界ではJX-ENEOSと並んで、「いつも勝っているチーム」である。2012、2013年は2年連続で、都市対抗決勝戦の顔合わせがこの2チームだった。
全国の大学リーグでさんざんもまれてきた選手がズラリと並ぶ常勝チームが、高卒で入社した二十歳前後の若い選手をレギュラー起用することには、かなり大きな覚悟と期待と興味があってのことだ。
「使ってみたくなる選手なんですよ……」
笑ってそう語ってくれた堀井哲也監督の目がキラリと光ったのを、私は見逃さなかった。
タイミング、柔軟性、闘う心が生むフルスイング。
とにかく、振れる。
空振りしたバットが自分の背中を叩くのを、私は何度も目撃している。
フルスイング。簡単に言うが、これはなかなかできることじゃない。
素振りならできる。しかし、実戦の打席でフルスイングをするためには、タイミングが合ってなくてはいけない。タイミングを外された打者のスイングは、ことごとく力なく崩されている。
もう1つは体の柔軟性だ。実際にバットを振ってみるといい。説明はいらないだろう。
そして3つ目がファイティング・スピリットだ。この闘う心、もっといえば「敵愾心」。相手投手に、そして投じられたボールに対してそうした熱い思いがなければ、絶対にフルスイングにはならない。
渾身のスイング。打球が外野手の頭上を越す。
その瞬間、石岡のヘルメットが飛ぶ。坊主頭。タテの空手チョップのように腕を振って、猛然と一塁ベースを蹴る。飛び散る汗。スパイクの爪がガッシとグラウンドをつかむ。スライディングというよりはダイビング。すっくと立ち上がって、三塁ベースに仁王立ちだ。
高校時代からこうだった。
1番・ファースト。長身の左打者。興味深いがへんな選手だった。そこが魅力だった。そのままの“若さ”で、なりふり構わず、自分の野球を全うする。