日本製紙の伊東亮大は「足の速い駒田徳広」。

　今年のアマチュア野球の中に、近未来に糸井嘉男、柳田悠岐のような“変身”を期待したい打者が二人いる。

　こういう打者が、プロでどんな活躍をするのか、しないのか。そこを今から見たくてしかたがない。

　日本製紙石巻の伊東亮大内野手（25歳・194cm90kg・左投左打・武蔵大）は「足の速い駒田徳広（元・巨人、横浜）」だ。

　このサイズながら4番に座ったり、リードオフマンとして先制パンチを浴びせたり、攻めのバリエーションをいくつも持っている。

　とうぜん足元は脆いのだろうと、相手バッテリーはもちろんスライダー、カットボール、フォークにツーシームと、変化球でさんざん低目を攻める。しかし、打ちにくいボールを、伊東はことごとくホームベースの上でカットしてしまう。

　ホームベースの上、ここが貴い。

　のめってファールにするのは並みの打者。ファールの打ち方にも「松・竹・梅」があるのだ。

　自分のポイントまで引っ張って来てからカットにするので、根負けした投手がちょっと甘いコースに投げてこようものなら、一撃でジャストミートだ。

　それも、待ってましたとばかりのプルヒッティングじゃない。コースに逆らわない“大人の打ち方”で左中間、右中間によく伸びるライナーを弾き返す。

プロにおける最大の資質は「代打男」ではないか。

　何より走る姿、これを見てほしい。

　このサイズだと多くの選手は、巨体を持て余してバタバタするだけで、なかなか進まない。どうしてもそんな姿を想像してしまうのだが、なんのその、大きなストライドで巨体をグイグイ前に進める圧巻のベースランニングだ。

　肩の具合がもう一つらしいが、私が感じている伊東亮大のプロにおける最大の資質は「代打男」だ。

　ファーストストライクを痛打できる、というのがその理由だ。長身で腕も長いから、「ストライクゾーン」が他の選手とは大きく異なる。それでいい。四球なんか欲しがっていない。

　自分のストライクゾーンに最初に来たボールを、ひと振りでジャストミート。これができる打者は「代打男」になれる。長いリーチをもてあますことのない、柔軟なバットコントロール。それを駆使した快打、巧打を、都市対抗の大舞台で私は何度も目撃している。ものすごく美しく走れるヤツだから、本当は1打席ではもったいないのだが。

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