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“山田哲人世代”とは呼ばせない!
オリックス・駿太、打撃覚醒の理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/09/24 10:30
力感あふれる下半身が、駿太のスイングスピードを支えている。打率は糸井嘉男についでチーム2位、山田哲人の独走を許すわけにはいかない。
バットコントロールには定評があった“上州のイチロー”。
もともと前橋商で“上州のイチロー”と呼ばれていたように、駿太のバットコントロールには非凡なものがあった。力強さはないが、合わせるのが上手い。ルーキーイヤーに高卒外野手としては球団史上初めてとなる開幕スタメンを勝ち得たのも、そうした能力が当時の岡田彰布監督の目に留まったからだった。
しかし、プロの力強い球と切れの鋭い変化球にはついていけず、打撃の評価がそこから上がることはなかった。
では、何が変わったのか。
駿太の変化で最も大きいのは、下半身がどっしりとした力強いスイングをするようになっているところだ。
オリックスのトレーニング兼コンディショニングコーチの本屋敷俊介は、駿太の変化をこう感じているという。
「駿太はチームメイトから『太ももお化け』と言われるくらい、下半身がガッチリしています。入団してからしっかりと筋力強化をしてきたんです。昨年のオフからは初動負荷や股関節を柔らかく使うということをテーマに取り組んできて、筋力のベースが一回り大きくなって、筋量がさらに上がったんですね。そして、足からの力で股関節をうまく回転させて使えるようになってきて、スイングがものすごく速くなっているんですよ」
「フルスイングしなくてもホームランが打てる」
本屋敷コーチの話によれば、シーズン中に取り組んだある練習が一つの契機になったのではないかという。その練習とは、トップの形を作った状態で後ろからタイヤチューブを使って体を引っ張ってもらい、その反動を生かしてスイングするという練習だ。
「軸足にしっかり体重を乗せて、いかに自分の力を100出すか。この練習をやってから、力の出し方が分かってきたように思います。フルスイングをしなくても、ホームランを打てるようになった。8月に京セラドームでホームランを打ったんですが、その前日に、タイヤの練習をやっていて、本人が『つかんだ気がします』と言っていました。そこから成績が上がっていったので、下半身の力の出し方をつかんだんじゃないでしょうか」
駿太も手ごたえを感じている。
「僕は左足に体重を乗せて打つタイプなので、タイヤを使ったその練習を取り入れることで、打席の中でのイメージをしながらやることができました。大事なのは体重移動なので、しっかり力が入った状態で打つ練習ができる。タイミングが上手く取れたときに、打席で思い切ったスイングができるんです」