MLB東奔西走BACK NUMBER
元中日・チェンがMLBで開花するまで。
2人のコーチと、黒田博樹の存在。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/09/23 10:40
オリオールズのチェン投手。昨シーズンの成績7勝7敗、防御率4.07から、今シーズンは9月16日時点で、16勝4敗、防御率3.58と大きな飛躍を遂げている。
野茂英雄、吉井理人らも師事した投手コーチの存在。
このチェンの取り組みを陰ながら支え、躍進を促したコーチが2人いる。
1人は今シーズンから投手コーチに就任したデーブ・ウォーレス氏だ。
ウォーレスコーチといえば、昔からのMLBファンにはお馴染みだろう。1995年に野茂英雄投手がドジャース入りした際の投手コーチで、その後、フロント入りも経験しながらメッツ、レッドソックス、アストロズで投手コーチを歴任。
この間、野茂以外にも吉井理人投手、マック鈴木投手など数々のアジア人投手を指導してきている。その経験を元にチェンにアドバイスを続けてきた。
「元々は調整日のブルペンで40球とか50球以上投げていたんですけど、デーブからそんなに投げていたら体力が保たなくなるから少し減らした方がいいんじゃないと言われたんです。
最初は慣れなかったんですけど、後半になってリズムがとれるようになってきた。今は、今日は何が練習したいのか、この球数の中でどんな練習ができて何ができないのか、そういう風に自分で考えるようになりました。お陰で試合でも体力がもつようになってくれて、今のスタイルのブルペン練習を続けたいという気持ちになってます」
ウォーレスコーチの指導により、ブルペンで球数を投げる調整法から、少ない球数で集中して修正するメジャー流の調整法へと変わり、それが形になってきたという訳だ。
調整メニューを作成するのは、日本人コーチ。
さらに今シーズンのチェンは、もう1つのメジャー流調整法を取り入れている。それをサポートしているのが、もう1人のコーチ、今シーズンからオリオールズのストレングス・コーチに就任した内藤良亮氏だ。
内藤コーチは昨年までチーム傘下3Aでストレングス・コーチを務めていたが、今シーズンからメジャーに昇格。投球翌日の体調を確認しながらトレーニング・メニューを組み立て、シーズンを通して戦える体力維持メニューを作成するのが仕事だ。チェンは彼の貢献をこう語る。
「ピッチャーとしては、ランニングしないといけないと思っていたんです。これまでの2年間は自分の中でメニューが決まっていて、長い距離を走ることが体力をつくると思っていた。でもリョウ君(内藤コーチ)とじっくり話をしたんですけど、ただ長い距離を走るだけでなく、しっかり運動量を計算して、10本やらなくても4本で同じ結果を導けるようにするのが一番いいという結論になった。ヒザの状態もあるので、いろいろ話をしながらトレーニングメニューをつくってもらって随分助かっています」
ウォーレス、内藤両コーチの支えもあり、チェンは3年目にして遂にメジャー流へのシフトチェンジに成功した。
さらに調整法以外でも、マット・ウィータース捕手の助言もあり、見せ球としてのチェンジアップ習得に着手。試行錯誤を繰り返しながら徐々に手応えを掴んできたのも好調を後押ししているようだ。