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田中将大の復帰は「経営判断」!?
手術か青信号か、勝負の中4日。
posted2014/09/22 11:15
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
ホッとした。
田中将大が復帰したブルージェイズ戦の話である。1回表、いきなり無死一、三塁のピンチを迎えた時には最悪のシナリオも想像したが、ダブルプレーで1点に抑えたのが大きかった。
終わってみれば、5回3分の1、5安打、4三振、無四球。投球数は70球で、うち48球がストライクという内容で13勝目をあげた。試合前、ロスチャイルド投手コーチは、
「スプリットの質を見極めたい」
と話していたが、2回の2死三塁のピンチには、8番のゴインズに対して4球続けてスプリッターを投げるなど、不安のないことをうかがわせた。
まずは、めでたい復帰戦の内容。
この日の投球を見ると、もし田中が戦線を離脱していなければヤンキースは少なくともあと3勝は積み上げることが出来ていたと推測されるので、そうなればワイルドカード争いをしていただろう……。
やはり、田中の存在が今季のヤンキースの生命線だったのだ。
なぜ、この期に及んで田中が投げたのか?
では、今回の田中登板の意味合いについて考えていこう。
先週、復帰登板が発表された時点では、まだわずかではあるが、ワイルドカードでのポストシーズン進出の可能性があった。私は経営者側が選手に対し「ジーターも最後だし、まだ諦めていない!」というメッセージを発信したのだと思っていた。田中の登板は、監督判断ではなく、「経営判断」だからだ。
実際、アスレチックスとマリナーズが不調なので、ヤンキースは連勝していればチャンスはあった。しかしその後、どうも選手に覇気がなく、数字上の可能性は残っていたにせよ、ポストシーズン進出に向けて、田中登板の意味はほとんどなくなっていた。