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名馬シンザンと同じエピソード?
新潟2歳Sを勝った“後肢で歩く馬”。
posted2014/09/04 10:30
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
出世レースなどという呼び方がある。明確な定義があるわけではないが、2歳馬の特別や重賞をさすことが多い。のちにクラシックやGIで活躍するようになる馬が多く出走し、上位を占めるようなレースのことだ。
競馬ファンの中で出世レースとして知られているのはラジオNIKKEI杯2歳ステークスだ。これは社杯の提供社が社名を変える前はラジオたんぱ杯と呼ばれていた。2歳戦には珍しく、2000mという長い距離で行なわれるので、翌年のクラシックで活躍する馬を多く輩出した。もっとも有名なのは2000年のレースで、このときは1着がのちの皐月賞馬アグネスタキオン、2着にダービー馬のジャングルポケット、3着がNHKマイルカップを勝つクロフネという豪華メンバーだった。
もうひとつ有名な出世レースは札幌の2歳ステークス。こちらも1800mと比較的長い距離で行なわれ、翌年につながるレースとして知られている。ゴールドシップが2着になったり、のちのダービー馬ロジユニヴァースが勝ったりした。
出世レースの仲間入りをしつつある新潟2歳S。
それに比べると、1600mで行なわれる新潟2歳ステークスはクラシックやGIとはあまり縁がなかった。ところがここにきて急に出世レースの趣を深めている。3年前には今、世界ランキング1位になっているジャスタウェイが出走して2着になった。昨年は牝馬のハープスターが3馬身半の差をつけて圧勝し、2着にイスラボニータが食い込んだ。ハープスターは桜花賞を豪快に勝ったあと、夏になって札幌記念も勝ち、10月の凱旋門賞で日本馬の初優勝をねらっている。2着のイスラボニータが皐月賞を勝ち、ダービーで2着になったことも記憶に新しい。
それだけに今年の新潟2歳ステークスにも期待が膨らんだ。出走してくる馬のほとんどは新馬か未勝利を勝った1勝馬で(2勝している馬は1頭だけ)、能力や将来性の見極めなど簡単ではないのだが、その分、余白の多いキャンバスみたいに膨らませた想像を描きこむことができ、ファンにとってはGIとはまた違った楽しみがあったのではないか。