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名馬シンザンと同じエピソード?
新潟2歳Sを勝った“後肢で歩く馬”。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/09/04 10:30

名馬シンザンと同じエピソード?新潟2歳Sを勝った“後肢で歩く馬”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

新潟2歳Sをレコードで勝ったミュゼスルタン。レース後に前肢に骨折が見つかったが、軽症で春には復帰の見込みだ。

惹かれた、シンザンと同じエピソードを持つ馬。

 人気は多くのGI馬を送り出している藤沢和雄厩舎のアヴニールマルシェ、今年のダービー馬を出した橋口弘次郎厩舎のナヴィオンなどが集めたが、個人的に惹かれたのは3番人気のミュゼスルタンだった。父キングカメハメハという血統、器用に内を突いてきっちり伸びた新馬のレースぶりももちろんだが、注目したくなるエピソードを読んでいたからだ。

 この馬、後ろの足(後肢)2本だけで立ち上がり、3、4歩歩くことができるのだという。馬が後肢で立ち上がる様子は牧場やパドックなどで見かけないこともないが、そのまま何歩かでも歩くというのはめったに見ない。よほど強い足腰を持っていなければできる技ではない。

 その「二足歩行」に惹かれるのは、競馬を見はじめたころに目にした印象的な写真のせいだ。50年前、戦後初の三冠馬となり、種牡馬になってからも大活躍していた名馬シンザンが、まさに後肢2本で立ち上がったところをとらえた写真が、競馬をはじめたばかりの頭にしみ込んだ。「シンザンはこのままの格好で50mは歩く」という説明を併せ読み、「名馬は後肢二足歩行」という固定観念が出来上がってしまったのだ。のちにシンザンのいる谷川牧場を訪ねて、後肢立ちを見せてもらったこともある。だから予想に迷いはなかった。ミュゼスルタン本命。

闘争心を見せ、1番人気を抑えきっての勝利。

 レースは逃げ馬が速いラップを刻んで展開した。ミュゼスルタンは内側のコースの中団よりもやや後ろ。周りに馬を置き、じっくり構えている。直線に入るとややポジションをあげ、いっぱいに広がった馬群の間を縫うように、上位をうかがう。先に抜け出したニシノラッシュを楽にとらえて先頭に。ここで一瞬スピードが緩んだような気がしたが、外から1番人気のアヴニールマルシェが並びかけてくると、再び闘争心を見せ、最後まで抜かせずに押し切った。

【次ページ】 勝ちタイムはレコード。春が楽しみになった。

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