Number Do ExBACK NUMBER
日本一のトレラン大会をつくれ!
100マイルレースの舞台裏 <後編>
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byToshiya Kondo/Hiroshi Yamada
posted2014/08/22 11:00
169kmという距離、険しい山道。UTMFはランナーだけではなく、運営側にもタフさが要求される大会だ。
「山には世間の目がない分、大人として振舞うべき」
大会参加者の平均年齢は、41歳。三浦さんは、トレイルランニングを大人の遊びにしたいと願っている。
「本来、アウトドアスポーツは大人の遊びなんです。自然の中には、実社会のように上司の目や世間の目がありません。だからこそ、大人として振る舞うべきなんです。主催者が規則で縛るのではなく、参加者が規則を守るだけでもなく、自主的に良識ある行動をするようにしたい。UTMFがそういうことを伝える象徴的な大会になりたいと思っています」
海外トップランナーから、大会の評価はとても高い。テクニカルな部分とスピードを求められる部分が組み合わされ、路面状況もバラエティに富んでいるコースは難しいと言われているが、昨年3位に入ったフランス人のセバスチャン・セニョーは「世界中のトレイルを凝縮したような多様性のあるコースで、走ってみたいレースの筆頭になりつつあるよ」と言っていた。
「日本人のホスピタリティの評価も高いですよ。もともと外国人に優しい国民性を持っていますから、日本の普通のおもてなしをやれば、それだけでレベルの高いものになるんです」
トレイルランニングは“キャズム”を超えられるのか。
700人ものボランティアのサポートに支えられ、寝る間を惜しんで駆け巡る映像班の動画に胸を躍らせ、裏で支える多くの縁の下の力持ちたちによってUTMFという大会は支えられていた。
そして大会に関わる全ての人が願うことは、トレイルランニングの健全な未来だ。
これまでコアなファンに支えられていたトレイルランニングは、これから広く一般に認知されるアウトドアスポーツへと脱却しようとしている。UTMFという日本最大の大会を運営側から覗いてみると、日本におけるトレイルランニングの現在地は、このコア層から一般層へ広がるために越えなければならない、大きな溝(キャズム)にあるように感じた。
このキャズムの向こう側に健全な未来を作っていけるかどうか、それは、選手、サポート、運営側全ての人々が目指す共通したベクトル作りに掛かっているのかもしれない。