Number Do ExBACK NUMBER
日本一のトレラン大会をつくれ!
100マイルレースの舞台裏 <後編>
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byToshiya Kondo/Hiroshi Yamada
posted2014/08/22 11:00
169kmという距離、険しい山道。UTMFはランナーだけではなく、運営側にもタフさが要求される大会だ。
アレルギーから宗教的な問題まで、不安をサポート。
海外から参加するランナーは男性が80%、世界的な一流企業に勤務したり、医者など比較的裕福な人が多く、また、自国でトレイルランのレースを主催する人が視察目的に来ることもあるという。彼らと接する時に心掛けていることや苦労を聞いてみた。
「選手からの問い合わせに応えるのが大変です。食事にアレルギーがないか、宗教的な問題はないか、など事前にいろいろ聞いておくんです。事前説明会を開いたり、コースの下見に出掛けたり、一緒にご飯を食べる機会なんかも作って、顔を覚え合う場面といいますか、人間関係作りは意識してやっていました。日本人ランナーにとっても、知っている人がエイドで待っていてくれているって嬉しいことでしょ? 異国の地ならなおさらだと思うんですよ」
大きなトラブルはなかったのだろうか?
「去年かな、インドネシアに駐在するイギリス人ランナーが途中で高山病になって肺に水が溜まってしまって、5日間も入院したことがありました。病院に付き添ったりもしたんですが、実はその方が今年も参加してくれて。残念ながらA10本栖湖でまたリタイヤしてしまいましたが、たぶん来年も来ますね(笑)」
外国人ランナーはUTMFに対してかなり好意的なようだ。今年は関門が厳しく、全体的に成績は悪かったというが、それでも「大会の運営はしっかりして、サポートも応援もしてくれて嬉しかった」「景色がきれい」「丁寧に大会運営をやっている」というポジティブな反応が多かったという。
「参加リピート率は高いんじゃないかなぁ。日本に来る良い口実になっているみたいですしね。レース前後は観光もして、だいたい5泊はしている方が多い。長く滞在するので地元の人にも喜ばれるし、外国人ランナーの観光業への貢献度は高いんじゃないですかね。3年連続参加の人もいて、私たちにお土産を持ってきてくれることもあります。
それが嬉しいんですよね。しっかりした人もいれば、のんびり屋の人もいたり、それぞれのお国柄がでるのも面白いですよ。この活動はこれからもできる範囲で続けたいです」
アビドは日本のトレイルラン大会の評判を担っている。
レース最終日の夜、河口湖畔で外国人ランナーとボランティアスタッフを集め、親睦とお疲れ様会を兼ねてBBQ大会を開いた。そこには、外国人トップランナーも労いと感謝の意を伝えようと顔を見せている。
国際レースとなったUTMFにとって、アビドは貴重な存在だ。選手は彼らとの触れ合いを通じて好印象を持ち帰り、SNSなどで情報をシェアしていく。世界各国でのトレイルシーンにおける日本のトレイルラン大会の評判を担っていると言っても言い過ぎではないはずだ。
そして合言葉のように言われているのだろう。「困ったらアビドに聞け」と。