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日本一のトレラン大会をつくれ!
100マイルレースの舞台裏 <後編>
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byToshiya Kondo/Hiroshi Yamada
posted2014/08/22 11:00
169kmという距離、険しい山道。UTMFはランナーだけではなく、運営側にもタフさが要求される大会だ。
コース選びのスタートは、飛行機から見た富士山。
三浦さんたちの大会作りが始まったのは2009年頃。まだ名前すら決まっていなかった。とはいえ具体的なものは何もなく、軽井沢も候補地として名前があがっていたくらいだ。
「どうせ作るなら日本を象徴する大会にしたい。そう考えていた時、たまたま飛行機の上から見たんです、富士山を。家に帰り地図を広げ、いろいろ調べていくうちに富士山のまわりがぐるっと1周繋がるかもしれないと思うようになった。そこからは妄想大会ですよ(笑)。メイン会場はどこにする? シャモニーに匹敵する場所はどこだ? 富士山本宮浅間大社なんてどう? なんてね」
「富士山」というキーワードが浮かぶと地元にコネクションを持つ仲間を募った。現在、実行委員に名を連ねている面々を口説くと、高校のOB会などの力も借りながら広範囲にネットワークを築いていった。
そしてそのネットワークをうまく使いながら、環境省や防衛省、観光庁、2県11市町村、そして周辺住民の理解を得つつ、コース上の地権者や環境保護団体との膨大な折衝、交渉を重ねて行った。そういった気が遠くなるような労力を掛けて、UTMFは作られていったのだ。
問題山積でも、ガチガチの規制には頼りたくない。
「今、トレイルランニングの世界は曲がり角に来ていると言われます。大きく問題として取り上げられているのは、環境への負荷とランナーのマナーですね」
例えば、食事や着替えなどを手伝うプライベートサポートの問題。筆者も昨年サポート側にまわったこともあり、その面白さはよく分かる。だが、どうサポートしたらいいのかノウハウが蓄積されていない中で、手探りでサポートしていたのも事実だ。
例えば、選手がいつ来るか正確な時刻が分からない。だからと言って、どれくらい前から場所取りすべきか判断に迷うのも事実。複数の選手をサポートする場合、どうしても結果的に長時間占有してしまうこともあった。
「UTMBでも似た問題が起きていて、チケット制にして規制を始めました。でも、個人的には、大会側がガチガチに規制する方法は取りたくないんです。啓蒙活動は勿論するけれど、自主的に配慮して解決して欲しい。フィニッシュゲートの占有問題も同じです。家族と一緒にゴールするシーンは微笑ましいじゃないですか。あれを規制するってナンセンスです。チームも家族の代わりなんだと思うんですよ。選手もサポートする人も、大会を作る大きな構成メンバーである意識を持って欲しい」