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日本一のトレラン大会をつくれ!
100マイルレースの舞台裏 <後編>
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byToshiya Kondo/Hiroshi Yamada
posted2014/08/22 11:00
169kmという距離、険しい山道。UTMFはランナーだけではなく、運営側にもタフさが要求される大会だ。
「生みの親」が語るUTMFの課題とは。
“UTMF、100点満点で何点の大会になりましたか?”
「んー。どうだろう。年々課題が出て、それをきちんと修正してきてはいるんだけど、まだ60点かなぁ」
腕を組んで深く考え込んだ三浦務さんは、この数年間のことをまるで走馬灯のように思い返していた。三浦さんは事務局メンバーの一人であり、ゴールドウインの社員であると当時に、発案段階から創設にかかわるUTMFの生みの親とも言うべき存在だ。
「今年もいろいろ課題が噴出しました。トラブルに対して、現場で臨機応変に対応できていなかったのも事実です。ハード、ソフト両面で現場の判断に頼りすぎない体制作りをしないといけないですね」
トラブルとは、コースが狭くなる杓子山や雪見山の下りでのランナーの渋滞、麓エイドの混雑、本栖湖付近の路上駐車、さらにはフィニッシュゲートをランニングチームが占有してしまった問題などが挙げられる。
「想定を超えていました。読みが甘かったです」と三浦さんは話すが、関係自治体や地元の理解、関係する諸団体との折衝など、一筋縄ではいかない課題も多くあるという。
「今年の大会の様々な混乱の元を辿ると、コースが直前で時計回りになったことが影響しています」
地方自治体との折衝の結果、コースを直前で変更。
前編でもふれたが、今年のレースは前回とは逆回りのコースで行なわれた。ボランティアスタッフの配置などすべての活動にも大きな影響を与えたわけだが、なぜ、大会1カ月前にコースを変更せざるをえなかったのだろうか?
「第2回ではコース設定出来た、富士山の南東にあたる水ヶ塚から太郎坊までの6kmほどのエリアを使えなかったからです。ここは国有林をレクリエーションのために開放した自然休養林というエリアなんですが、自然環境へのインパクトを懸念した県の自然保護課から使用を自粛するように要請された為です」
全体169kmの内、わずか4%にも満たないこのエリアが使えなくなったことで、コースを逆回りに変更。これは、2県11市町村が関係するUTMFのコース設定がどれだけ難しいのかを物語っている。
UTMF事務局はゆるやかな組織だ。実行委員長でもあり、同時に現役アスリートでもある鏑木さんが、全ての時間をUTMFにのために使えるわけではないように、それぞれのスタッフが本職の仕事を抱えながら、実行委員会形式で大会を運営している。
「やりたい事とやらなければならないことが多岐にわたっているんですが、常勤としてスタッフを雇うことは難しい。だから、僕らの思いに共感してくれる仲間を集め、一緒に大会を育てていっている感じです。毎回ほころびが出るけれど、その度に修正を繰り返しています」