フットボール“新語録”BACK NUMBER
W杯の敗因の1つ「コンディション」。
調整過程に浮上した“3つのミス”。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/08/04 10:30
アギーレの日本代表監督就任を発表する会見で、ブラジルW杯での敗因を語った原博実技術委員長。アギーレについては「お金のないクラブで結果を残すなど、引き出しの多い監督」と期待を口にした。
体作りと暑熱順化を分けたアメリカ。
ブラジルW杯のベルギー対アメリカ戦後、咲花はミックスゾーンでこう説明した。
「ブラジルW杯の準備で最も注意したのは、『体作り』と『暑熱順化』のプロセスを分けることでした。いきなり暑いところでフィジカルのベースを作ると、負荷がかかり過ぎるからです。
まずは涼しい西海岸のサンフランシスコで合宿を行ない、そしてニューヨークを経由して、暑熱順化のためにフロリダ入りしました。理論によれば、暑熱順化には7~10日間かかる。フロリダで7日間、強度を落としたメニューを行ないました」
アメリカは涼しい場所でまずは体を作ることに集中し、そこから暑い場所に移動して暑熱順化のプロセスに入ったということだ。負荷と強度が実に良く計算されている。
咲花はさらに理論的な根拠を述べた。
「体がフィットしていれば、暑熱順化のスピードが速まります。逆に体が疲れていると、暑熱順化のスピードも遅くなります。だから最初の段階で、きちんと体をフィットさせる必要がありました」
体がフィットしていなければ、暑熱順化は遅れる。日本は指宿合宿後、埼玉で親善試合を行ない、フロリダのクリアウォーターに移動して合宿を行なったが、そこで期待するような効果は得られなかったのはこのためだろう。
フロリダで午後の練習は厳禁だった。
そして些細なことであるが、ここで2つ目の見過ごせない小さな失敗が起こる。それは「フロリダで夕方に練習したこと」だ。
アメリカ代表の常識として、フロリダで合宿を行なう際には、必ず午前中に練習時間を設定する。午後はスコールが降り、夕方には雨が上がるものの、ものすごい蒸し暑さになるからだ。必要以上の湿気は、無駄に体力を消耗させてしまう。
しかしザックジャパンは、毎日16時前後から練習をスタートさせた。芝生からは湯気が立ち上り、まさにサウナ状態。当時はそれが暑熱順化にプラスになると個人的にも思っていたが、完全な知識不足だった。ブラジル北部の暑熱対策としては“やり過ぎ”なのだ。