フットボール“新語録”BACK NUMBER
W杯の敗因の1つ「コンディション」。
調整過程に浮上した“3つのミス”。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/08/04 10:30
アギーレの日本代表監督就任を発表する会見で、ブラジルW杯での敗因を語った原博実技術委員長。アギーレについては「お金のないクラブで結果を残すなど、引き出しの多い監督」と期待を口にした。
南アフリカでは、現地で劇的な回復が見られたが……。
2010年W杯の準備期間を思い返すと、スイスの高地合宿までは選手の体が重かったものの、南アフリカに入ってから劇的に選手のコンディションが回復した。その記憶が残っていたため、個人的には「ブラジルに入れば戻るはず」と楽観的に見ていた。しかし、ついに敗退が決まるまで、コンディションが戻ることはなかった。
今回の準備期間のどこに問題があったのだろう? コンディショニングのプロに話を聞いたところ、3つの問題点が浮かび上がってきた。
暑熱順化と同時に走り込みを行なったザック。
1つ目の失敗は、「暑熱対策と体作りを同時に行なったこと」だ。
今回日本は、ブラジルW杯に向けて鹿児島県指宿で合宿を開始した。日差しが強く、湿気もあり、立っているだけで汗が吹き出た。暑熱順化のスタートには絶好の場所に思われた。
だがザックは、同時にここで体作りも求めてしまう。2部練習で走り込みを行ない、まるでシーズン前の合宿かのように徹底的に体を追い込んだ。練習後のミックスゾーンでは、疲労を理由に取材を断る選手もいたほどだ。
この過酷な環境での追い込みが裏目に出る。
“暑さ”と“ハードな練習”のダブルパンチで選手が疲弊。短期間では抜けないほどの疲れが蓄積されてしまった。結果論になってしまうが、まずは暑さが負担にならないところで、体を作るべきだった。
この問題点をうまくクリアしたチームがある。咲花(さきはな)正弥がフィジカルコーチを務めるアメリカ代表だ。咲花はスポーツ科学の論文を常にチェックし、理論と実践の両面からフィジカル強化に取り組む業界のトップランナーのひとり。ユーロ2008と2010年W杯ではドイツ代表を担当していた。