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W杯の理想的な「負け方」と「勝ち方」。
コスタリカとアルゼンチンの対照性。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2014/07/07 11:30

W杯の理想的な「負け方」と「勝ち方」。コスタリカとアルゼンチンの対照性。<Number Web> photograph by Getty Images

オランダvs.コスタリカ戦は、シュート数で20本対6本、パス数で694本対338本と、圧倒的にオランダが攻めた上での引き分けだった。一方、コスタリカの守備の意識は非常に高く、オランダ相手にオフサイドを13回も取っている。

どうにも物足りないアルゼンチンの試合。

 内容はともかく結果を残すのは、強豪が持つ強みである。それにしても、アルゼンチンのゲームは見どころが少ない。“レオ”ことリオネル・メッシは、あきれるほどに運動量が少ない。ピッチを散歩しているようだ。

 前線で動かないのも、戦略のひとつにはなる。しかし、ゴンサロ・イグアインがメッシを追い越してプレスバックするのには、首をひねってしまう。そのイグアインにせよ、メッシと揃って前残りすることが多いのだが。

 前線との比較でタレント不足が指摘されてきた最終ラインは、大会前の評価を上回る手堅さを見せている。ハビエル・マスチェラーノとフェルナンド・ガゴのセントラルMFは、猛烈なハードワークでピッチを駆け回っている。アルゼンチンが'86年以来の世界制覇を成し遂げたら、僕はマスチェラーノをMVPに推したい。

 攻撃と守備の著しい分業は、メッシの攻撃力を最大限に引き出すためなのだろう。だとしても、連動性や流動性に乏しい。スイス戦、ベルギー戦と、スペクタクルにはほど遠いサッカーが続いている。

 ベルギーとの準々決勝では、アンヘル・ディマリアが負傷してしまった。機動力豊かなこの26歳は、攻撃に変化をもたらす重要な存在だった。

 筋肉系のケガは、すぐに回復しない。彼のブラジルW杯は、おそらく終わりを告げただろう。アルゼンチンが表現してきた数少ない魅力が失われてしまった。

 ブラジルW杯が終わったとき、アルゼンチンは、メッシは、「すべてを出し切った」と言えるのだろうか。ユニフォームの左胸に三つ目の星が加われば、試合内容は問わないのだろうか。

 コスタリカのような熱情の感じられないアルゼンチンの乾きが、僕には物足りないのである。ひとまずいまは、「準々決勝までは」と付け加えておくが。

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