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W杯の理想的な「負け方」と「勝ち方」。
コスタリカとアルゼンチンの対照性。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2014/07/07 11:30
オランダvs.コスタリカ戦は、シュート数で20本対6本、パス数で694本対338本と、圧倒的にオランダが攻めた上での引き分けだった。一方、コスタリカの守備の意識は非常に高く、オランダ相手にオフサイドを13回も取っている。
ギリシャ戦の死闘さえハイライトではない!?
しかし、28歳のキャプテンが「信じられないほど」と語ったチームメイトのハードワークは、絶対的守護神ケイロル・ナバスに輝きの機会をもたらした。
延長戦を懸命に乗り切ったコスタリカは、死地からの生還を果たす。PK戦でギリシャを振り切り、史上初のベスト8へ進出したのだった。
ところが、ギリシャ戦もまた今大会のハイライトではなかったのである。
7月5日に行なわれたオランダとの準々決勝で、コスタリカはギリシャ戦をさらにしのぐパフォーマンスを発揮する。ここまで4試合で大会最多の12得点をあげてきたオランダを無失点に抑え込んだのだ。
幸運に恵まれたのは事実だろう。ナバスの好守に加えてバーとポストが助けてくれなければ、延長戦だけでも3点は奪われていた。
それでも、座して死を待ったわけではない。
コスタリカは世界のメディアに対し復讐を果たした。
アリエン・ロッベンの恐るべきドリブルと、クラース・ヤン・フンテラールが加わった前線の脅威に直面しながら、鋭い槍のようなカウンターアタックを放った。
ナバスがいなければ延長だけで3点を失ったかもしれないが、相手GKシレセンがいなければ1点は返していた。キックオフ直後からチームを貫いた攻撃的なスピリットが、スペインも、チリも、メキシコも成し得なかったオランダ相手の無失点につながったと思うのである。
「We left everything on the pitch」
フットボーラーにとってのロシアン・ルーレットとも呼ばれるPK戦に敗れたナバスは、そう言って穏やかな表情を浮かべた。今大会での彼らの歩みに照らせば、「我々は持っているものをすべて出し切った」と訳せばいいだろうか。体力と気力を余すところなく振り絞ったコスタリカは、彼らをW杯の部外者扱いした世界中のメディアやサッカーファンに、心地よい復讐を果たしたのである。これ以上の「負け方」は、おそらく望めない。
コスタリカとは対照的と感じるのが、ベスト4入りしたアルゼンチンである。