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「俺らのパスサッカーに迫力があれば」
遠藤保仁が認める“力不足”と悔しさ。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2014/06/28 11:30
後半に攻撃のリズムを変える「ジョーカー」として投入された遠藤保仁だったが、勝利をたぐりよせることは簡単ではなかった。チーム最年長の男は、今後どんなキャリアを歩んでいくのだろうか。
「アジア全体のレベルが上がらないとダメ」
ブラジルW杯は日本だけではなく、アジア勢が全滅するという異例の大会でもあった。欧州勢もベスト16に残った国は半減した。南米開催のW杯で南米有利とはいえ、あまりにも結果が歪だ。遠藤は、アジアが1勝もできなかったことに危機感を募らせている。
「日本の強化の軸としては、外に出ていって強豪国と試合をする。これは今に始まったことじゃなく前から言っているけどね。日本に呼ぶにしても昨年のウルグアイとか、メンバーを揃えた国じゃないとダメでしょ。ただ戦えばいい、じゃ本当の強化に繋がらない。
あとは、アジア全体のレベルが上がらないとダメだね。南米予選はブラジル、アルゼンチンを筆頭にコロンビア、ウルグアイ、チリとか、強いチームがいくつもあって切磋琢磨している。
でもアジアは日本、韓国、オーストラリアぐらいでしょ。それじゃ世界で戦えるグループになるのは難しい。もう日本だけじゃなく、アジア全体として強化し、取り組んでいくことがこれからは必要じゃないかな」
「代表をあきらめる時は、現役を引退する時」
悔しさが大きかったが、逆に言えば負けたことでいろんなことが見えたW杯だった。この結果を受けて、日本のサッカーはまたひとつ成長していくだろう。遠藤の代表活動は、ここでひとつの区切りとなるのだろうか、個人的にはどういう考えでいるのかを聞いてみた。
「今回は、悔しさしかない大会だった。その悔しさはW杯で晴らすしかない。それに俺はいつも言っているけど、代表引退はしないよ。俺は代表でプレーすることで刺激を受け、成長してきた。国を背負って戦うすばらしさは、代表を経験したものにしか分からないけど、かけがえのないものだからね。だから、現役を続けている限り代表を狙う。俺が代表をあきらめる時は、現役を引退する時だから。どんな監督にも選ばれるように、これからも自分のプレーを磨いていくよ」
思えば遠藤のサッカー人生は、シドニー五輪、ドイツW杯など、厳しい経験がいつも出発点になっている。ブラジルW杯が新たなスタートになるのは、34歳にしてさらに成長を目指す遠藤にとって、むしろ必要なことだったのかもしれない。