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ベルギー黄金世代の中心、アザール。
「僕らは何かをやらかすダークホース」
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/05/15 10:30
一時はFIFAランク5位にまで躍進を見せたベルギー代表の中心、アザール。わき腹には日本語で息子の名前を彫ったタトゥーがあり、ゴール後などに見られるかも?
懸案のハードワーク不足もモウリーニョの下で改善中。
ロッベンがそうであるように「華」のある選手には、往々にして「汗」の不足が指摘される。アザールも例外ではない。代表のジョルジュ・レーケンス前監督から、公の場で「怠け者」と酷評された過去もある。
だが、ハードワーク不足は昨季までのこと。2年目のチェルシーで、新監督から「相手ボール時の貢献」をも要求された今季は、前線でのプレッシングや後方へのチェイシングにも走り回るようになった。シーズン半ばのスウォンジー戦(1-0)のように、勝敗を分けた1ゴールと共に、終盤に交代する直前のプレーが自陣内での守備だった事実を、会見の席でモウリーニョに讃えられた試合もある。
とはいえ、現時点ではまだ守備の意識が完全に染み付いているとまでは言えない。瞬間的な意識の欠落が最悪の形で浮き彫りにされたのは、チェルシーのCL敗退が決まった4月30日の準決勝2ndレグ(1-3)。
1stレグ(0-0)を怪我で欠場していたこともあり、得点への意識が必要以上に強すぎたのかもしれない。トーレスが決めた先制ゴールから間もないアトレティコ・マドリーの同点ゴール、そして終盤に許した敵の駄目押しゴールの場面では、いずれもファーサイドでのマークを怠って失点を招いてしまった。自軍のカウンター狙いに否定的とも受け取れる試合後のコメントもあり、アザールは続くリーグでのノリッチ戦(0-0)でベンチスタートを命じられた。
使わずにはいられない攻撃のキーマンに。
これは、モウリーニョの下で受けた2度目の「お仕置き」だった。
1度目は、CLのシャルケ戦でベンチからも外された昨年11月。古巣リールの試合を観戦したフランスで休日を過ごした後で帰国が遅れ、試合前々日の練習に参加しなかった行動に対する処罰だった。
しかし、シャルケ戦3日後のウェストブロム戦(2-2)ではスタメンに返り咲いている。後半ロスタイムに敗戦回避のPKを冷静に決めたのは、他ならぬアザールだった。2度目のノリッチ戦にしても、後半の頭から投入されると、結果には結びつかなかったが、明らかにチームの攻撃を活性化させた。指揮官にすれば、使わずにはいられない攻撃のキーマンなのだ。