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ベルギー黄金世代の中心、アザール。
「僕らは何かをやらかすダークホース」
posted2014/05/15 10:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
「黄金世代」の台頭が叫ばれるベルギー代表。主力メンバーには、プレミアリーグのレギュラー陣も多い。
その中でも最大級のタレントと言えば、エデン・アザールだ。チェルシーの23歳は、今季、チーム内トップの14ゴール7アシストでシーズン最終月の5月に突入。4月には、PFA(選手協会)選定の年間最優秀若手選手賞にも輝いた。戦力充実のチェルシー2列目にあって、最多の計53試合を4月末までにこなしていたアザールは、年間最優秀選手賞にもノミネートされている。
2年前のチェルシーが、アザールがユース時代から所属していたリールに支払った移籍金は約55億円。だが、それだけの価値はあった。何しろ、昨夏に監督となったジョゼ・モウリーニョをして「スペシャル」と言わしめた逸材なのだから。
魅せるプレーに、違いを生むプレーが加わった。
トレードマークは切れ味鋭いドリブル。低重心で安定度も抜群だ。「喜びが感じられてこそサッカー」と言う小さなテクニシャンは、チャンスとみれば魅せるプレーも忘れない。2アシストで完勝に貢献した3月のフルアム戦(3-1)では、惜しくも得点には至らなかったが、ラボーナでクロスを届けて相手ファンにも感嘆の声を上げさせた。
もちろん、モウリーニョから与えられた最大の任務は、観衆を魅了することではなく、決定的な仕事をすること。徐々に当人も「違いを生むプレーがしたい」と発言するようになった。結果として、今季はマン・オブ・ザ・マッチの常連に。
好例の1つが、2ゴール1アシストをこなした昨年12月のサンダーランド戦(4-3)だ。特に自身1点目のゴールは、バイエルン・ミュンヘンのワールドクラス、アリエン・ロッベンを彷彿とさせた。ロッベンとは逆の左サイドからではあるが、カットインで相手DF2名をかわし、ペナルティエリアの淵からカーブを掛けてファーポスト内側に決めたシュートは、対戦相手が「分かっていても止められない」レベルの個人技だった。